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29 Mar 2021
東京医科歯科大学 (TMDU) の研究者らは、口腔がんおよび食道がんに対する新たな治療戦略の可能性を明らかにした。
がん患者が前向きな結果を得るために、腫瘍が全身に広がる前に発見し治療することは重要である。
腫瘍細胞の広がりを転移と呼び、他の臓器を侵して死に至ることもある。
口腔がん、食道がん、口や喉のがんは、しばしばリンパ節に転移する。
残念ながら現在のところ、これら特定のがん治療の特効薬は存在しない。
このたび、TMDUの研究者らは、口腔がんおよび食道がんの治療に使用できる可能性のある複数の医薬品を特定した。
Molecular Cancer Research誌に掲載された論文によると、TMDUの研究者グループは、ピタバスタチンとカプマチニブの2つの医薬品を組み合わせることで、培養した口腔がん細胞の生存可能性やマウスモデルの腫瘍の成長を阻害することを発見した。
食道がんは世界で6番目に死亡率の高いがんで分子レベルでは比較的よく理解されているが、これまでの研究では具体的な治療法の開発には結び付いていなかった。
緊急な必要性により、TMDUグループは特定疾患に対して承認された医薬品を他の適応症に対し効果的に使用する「医薬品の再利用」に関心を持った。
これによって創薬・開発プロセスが大幅に短縮し、既存の治療薬の恩恵を受けられる患者数が増える。
本研究の筆頭著者である村松智輝助教は、「医薬品の再利用は承認された治療法がない疾患に対して、効果的な治療法を発見するために極めて有効となり得る」と述べた。
「口腔がんと食道がんを対象に、FDA(米国食品医薬品局)が承認した医薬品ライブラリーを選別することでプロセスを開始した」と述べている。
研究者らは、転移性の高い口腔がんの細胞株を用いて医薬品の選別を行った。
その結果、ピタバスタチンという医薬品がこれらの細胞の増殖を最も顕著に抑制した。
分子解析の結果、ピタバスタチンはMETシグナルと呼ばれる細胞経路を阻害することで作用することが分かった。
そこで、研究者らはカプマチニブという第2のMET阻害剤を加えた。
「ピタバスタチンとカプマチニブを併用することで、がん細胞の増殖をさらに抑えることができた」と筆頭著者である稲澤譲治教授は語った。「カプマチニブのみではがん細胞に影響を与えなかったが、ピタバスタチンとの相乗効果により、がん細胞の増殖を抑えることができた」
次に、これらの細胞をマウスに注入して腫瘍を生成させたところ、ピタバスタチンとカプマチニブの併用で同様の効果が得られた。
「マウスモデルの結果は、試験管内で得られた知見を裏付けるものだった」と村松助教は語っている。「このデータは、METシグナルがこれらの腫瘍における貴重な治療標的となる可能性を示唆している」
また、本研究では、これら特定のがんの生物指標となり得るGGPS1と呼ばれる遺伝子も確認された。この遺伝子の発現レベルはピタバスタチンに対する患者の反応性との相関可能性がある。
この研究は、これらの深刻な疾患の治療法を特定するために不可欠となり得る知識を提供するものである。
https://ecancer.org/en/news/19873-a-new-type-of-recyclable-finding-new-uses-for-established-drugs
(2021年3月17日公開)