ニュース
18 Mar 2019
Nature Communications誌に発表された研究は、ACVR1と呼ばれる酵素の阻害剤が、小児における最も致命的な脳腫瘍である、びまん性内在性橋神経膠腫(DIPG)の動物モデルにおいて腫瘍の成長を遅らせ、生存期間を延長させることを発見した。
現在、DIPGを治療するための承認薬はない。 この研究は有望な新しい治療戦略への扉を開く。
「われわれの結果は有望であり、この酵素の阻害剤を臨床試験で調査することは理にかなっていることを示唆している」と、本研究の上席著者であり、シカゴのAnn & Robert H. Lurie Children’s HospitalのStanley Manne Children’s Research Instituteの医師であり、Northwestern University Feinberg School of Medicineの小児科の准教授であるOren Becher氏は述べている。
「その前に、最も安全で効果的な薬剤を小児における試験で使用するために、動物モデルでさまざまなACVR1阻害剤を評価する必要がある」
2014年に、Becher博士の研究室は、ACVR1突然変異がDIPGのおよそ25パーセントに見出されることを共同発見した。今回の研究で、Becher博士らは、この酵素変異がDIPGの20パーセントに見られるヒストン変異(H3.1 K27M)と協調することを動物モデルで初めて実証した。これらの突然変異は腫瘍発生の開始において重要である。
ヒストンはDNAのスプールのように作用するタンパク質で、長さ6フィートのDNA鎖を各細胞の小さな核にまとめるのに役立つ。
ヒストンはまた、どの遺伝子がオンとオフを切り替えるのかを調整するのに役立つ。これは、ヒストン変異があるとうまくいかないプロセスである。
「将来の研究では、なぜそしてどのようにACVR1とヒストン変異がDIPG発症の引き金となるのかを検討する」と語るBecher博士は、Rory David Deutsch Malignant Brain tumour Research Scholarでもある。「このプロセスへのより深い洞察により、DIPGの子供たちにとって良好な治療法を特定することにより近づくだろう。」
(2019年3月4日公開)