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e-cancer:膵臓:低毒性・長期作用型薬剤が治療を改善する可能性

30 Aug 2019

他の多くのがんとは異なり、ほとんどの膵臓腫瘍は治療が困難である。
「それが、膵臓がんが最も致命的ながんの1つであるといわれる理由である」と、Columbia University Vagelos College of Physicians and Surgeonsの医学、病理学・細胞生物学の准教授であり、Herbert Irving Comprehensive Cancer Centerの膵臓がんの研究者であるKenneth Olive博士は述べた。

「膵臓腫瘍は、間質と呼ばれる結合組織の厚い層を増殖させる。間質反応によって腫瘍は硬化し、間質は腫瘍のシールドのように作用する」とOlive氏は述べた。同氏は以前の研究で、間質が化学療法薬のがん細胞への到達を妨げることを初めて明らかにしている。「その結果、ほとんどの化学療法薬は有効性を発揮するのに必要なレベルまで蓄積することができない」

Olive氏は、これを逆説的に、長期作用型で毒性の少ない薬剤のほうが効果がある可能性を示唆していると考えた。

「膵臓がん治療薬が効果を発揮するには、間質を通り抜けて腫瘍に蓄積するのに十分な時間、有効性を保つ必要がある。しかし、薬剤が血中に長時間持続することによる毒性は体のほかの部分ほど大きくはない」と彼は述べた。

新薬の併用試験

Journal Clinical Cancer Research誌に掲載されたOlive氏の最新の研究によると、候補となる薬剤が特定できた可能性がある。

本研究で使用されたのは、マウスおよびヒトの膵臓がん細胞で抗腫瘍活性を示したPTC596と呼ばれる実験段階の薬剤であり、適切な性質を持っていると考えられている:PTC596は半減期が長く(ほとんどのがん治療薬の半減期は数分から数時間)、多くのがん細胞にある薬剤排出ポンプを回避できる。
「これは、バリアを通過するあらゆる薬物ががん細胞を標的にできる可能性を意味している」とOlive氏は述べた。

これらの研究に基づいて、研究者らは、化学療法抵抗性の進行性膵臓がんを有する遺伝子組み換えマウスを用いて、PTC596とゲムシタビン(膵臓がんの第一選択薬)の併用療法を検討した。

2剤併用治療を受けたマウスは、単剤の標準治療を受けたマウスよりも3倍長く生存した。

「この標準的な遺伝子組み換えマウスモデルの生存期間が延長することは、どの治療法でもほとんどなかったため、この結果は驚きだった」とOlive氏は述べた。

彼らはまた、マウスで形成させたヒト膵臓腫瘍を使用して、PTC596とゲムシタビンおよび膵臓がん治療に一般的に使用されるナブパクリタキセルとの併用療法を検討した。

この併用療法はさらに効果が大きく、腫瘍は完全に縮小した。

「薬剤の安全性プロファイルと私たち自身の発見に基づき、膵臓がん患者を対象として、PTC596と標準治療との併用療法を検討する理論的根拠がある」とOlive氏は述べた。

微小管を破壊する

Olive氏のチームは、PTC596が微小管の形成を阻止することも発見した。微小管は、細胞分裂と細胞内の栄養素の輸送に関与するタンパク質のネットワークである。

Olive氏は、PTC596が別の微小管脱重合阻害薬であるナブパクリタキセルと相乗的に作用する可能性があることを実証した。

「異なる微小管阻害剤の併用は、将来の腫瘍学で重要な役割を果たす可能性を秘めている。さまざまな方法で微小管に影響を与える多くの薬剤を併用すれば、相乗効果を生み出すことができるだろう」とOlive氏は結論づけた。

https://ecancer.org/news/16440-pancreatic-cancer–less-toxic–more-enduring-drug-may-improve-therapy.php

(2019年8月9日公開)

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