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e-cancer:胃がん 胃がんの発症前に現れるバイオマーカーを発見

29 Oct 2020

アリゾナ大学ヘルスサイエンスの研究者らの研究結果によると、胃がん発症前に患者に現れる有望な新たなバイオマーカーは、胃がんの早期発見に役立ち、治療に対する患者の反応を改善する可能性がある。

このバイオマーカーは簡単な血液検査で検出できるため、時間を節約し、費用を軽減することが可能である。現在、胃がんの診断では、生検を介して胃の組織を内視鏡下で採取し、病理解析を行う必要がある。

アリゾナ大学医学部ツーソン校の消化器内科主任、Juanita L. Merchant博士が率いるこの研究は、英国消化器病学会の学術誌Gutで発表され、博士はアリゾナ大学がんセンターのがん生物学プログラムの研究者であり、全米医学アカデミーのメンバーにも選出されている。

このバイオマーカー、MiR130bはマイクロRNA、すなわち非コード領域の低分子RNAで、遺伝子発現の調節において重要な役割を果たし、疾患の発現と進行に影響を及ぼす。

MiR130bは骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)と呼ばれる一群の免疫細胞によって生成され、潰瘍と関連のある細菌、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)が原因の感染症と通常関連している。

胃内のこれらの特定のタイプの細胞は、H. pylori感染のずっと後で胃がんにつながることがある早期の前がん性(腫瘍発現前)変化と関連がある。この研究には、アリゾナ大学医学部ツーソン校の細胞分子医学科副研究主任で、がんセンターの組織採取細胞分子解析の共有リソースディレクターのYana Zavros博士との共同研究が含まれていた。

「この細菌を取り除くことができたとしても、多くの場合この感染症は必然的にがんを引き起こす一連のイベントを既に開始している」とZavros博士は述べている。「そのため、早期発見が非常に重要なのである」

この研究は、H. pyloriによって引き起こされる変化と似た胃内の変化をシミュレートする基礎科学のマウスモデルから生まれた。

これにより研究者らはマウスモデルでMiR130bを特定し、前がん性変化があるか既にがんに進行したヒトの患者の血漿中でも同じマイクロRNAを検出した。

「これは後向き研究であった」と、同大学のBIO5研究所のメンバーであるMerchant博士は述べた。「今後はさまざまな患者集団で、より前向きにこのバイオマーカーを調べることができるため、非常に胸躍らせている」

米国ではあまり知られていないが、胃がんは世界中のがん関連死の中で3番目に多い死因であると国立がん研究所は報告している。しかし、この所見は、胃がんや他の消化器(GI)がんのリスクが高いアリゾナ州の農村地域やラテンアメリカ系およびネイティブアメリカンの集団にとっては重大な意味があると思われる。これらの疾患はしばしば食事および環境因子が原因で生じ、長い期間検出されないことがあるためである。

Merchant博士の研究室にはがんセンターのU54助成金の「サブプロジェクト」があり(ネイティブアメリカンのがん予防のための連携)、H. pyloriを有するネイティブアメリカン集団のメンバーを対象にGut誌の論文に記述されたマイクロRNAの検出を研究している。

「私たちが発見したこの分子署名(マイクロRNA−MiR130b)は、H. pyloriを有していることと関連のある粘膜(胃の内側を覆う膜)の変化が患者にあるかを確かめるのに役立つ」と、Merchant博士は述べた。「血液サンプルは侵襲性が低く、患者に内視鏡検査を受けさせる必要があるかを判断する方法となる」診断した時点では、胃がんの治療が難しいことがある。

他のタイプのがんの治療で有効性が証明されている免疫療法は、胃がんを含むほとんどのGIがんに対してはそれほど成功していない。

研究者らは、胃がんにおけるこれらの新しい発見は、なぜ他のGIがんも治療に抵抗性を示すのかその理由に取り組む手助けとなると考えている。

「胃がんにおける患者の不十分な反応の根底にある機序は、他の臓器にも適用できると思われる」と、Zavros博士は述べた。「細胞が相互作用して患者を治療に対して抵抗性にする方法は、胃がん、膵臓がん、結腸がん間で非常に類似しているのではないかと思われる」

「2つの目的があると思う。診断の見地から有用なバイオマーカーとして捉えることもできるが、このマイクロRNA自体の標的に基づいて開発することができる治療法を検討することも可能である」とMerchant医師は付け加えた。

がんセンターの「Sparking Bench-to-Bedside Team Science Project(基礎研究から臨床への火付け役となるチームサイエンスプロジェクト)」アワードが資金を提供している別のプロジェクトが、この研究結果から構築されて、膵臓がんと胃がんの治療法を探求している。

研究者らは腫瘍の微小環境を調べており、特に免疫療法に対する化学療法反応を弱めると思われる、前述の免疫細胞のMDSCを調べている。

このプロジェクトはZavros博士の「BioDroid」プログラムに大きく依存しており、オルガノイドとしても知られる現実的な微細解剖学を用いて研究室でミニチュア臓器を開発している。これらはMerchant医師によって作成されたTissue Acquisition Repository for Gastrointestinal and HEpaTic Systems(TARGHETS)(消化器系および肝臓系組織採取レポジトリー)と連携して使用されている。TARGHETSはGI/肝臓バイオレポジトリーで、内視鏡検査を受けた患者の検体を収集している。

Zavros博士およびMerchant博士のふたりは、免疫療法に対する胃がんの抵抗性に取り組むための新たなアプローチの開発を可能にする付加的情報を明らかにするために、BioDroidとTARGHETSの取り組みに期待を寄せている。

「私たちは、患者を治療により反応させるために患者の腫瘍環境内でがん細胞や免疫細胞を再プログラムする方法を見つけたいと考えている」と、Zavros博士は述べた。「バイオマーカーは私たちに出発点を与えてくれる」

https://ecancer.org/en/news/18894-researchers-find-biomarker-that-can-appear-before-stomach-cancer

2020年10月21日公開

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