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29 Oct 2020
標準治療に反応しない腫瘍を有する軟部組織の急速に進行するがんの終末期患者1例が、免疫療法の新たな併用療法に対して「急速な完全寛解」を示した。
これは、John Theurer Cancer Center at Hackensack University Medical CenterおよびGeorgetown Lombardi Comprehensive Cancer Centerの研究者チーム(いずれの研究者もGeorgetown Lombardi Comprehensive Cancer Center Consortiumの一員)が発表した新たな研究によるものである。
免疫チェックポイントTリンパ球関連タンパク質4(checkpoints T-lymphocyte-associated protein 4:CTLA-4)とプログラム細胞死タンパク質1(programmed cell death protein 1:PD-1)をターゲットとする免疫療法をステージⅣの類上皮肉腫を有する19歳の患者に実施したところ、患者の腫瘍はこの併用療法後2週間以内に反応し、通常の活動を再開し、本報告時点で完全寛解が得られた。
この単一症例はJournal of Immunotherapy誌で(患者の同意を得て)報告された。
John Theurer Cancer Centerで皮膚がんおよび肉腫科長を務めるAndrew Pecora, M.D., F.A.C.P., C.P.E.、F.A.C.P.、C.P.E.は次のように述べている。「類上皮肉腫は稀ながんであり、肯定的な転帰はそれほど見込まれていなかった。この患者の治療が画期的に成功したのは、チェックポイント阻害剤に対する潜在的感度を示唆した根本的な機構を解明するため、本コンソーシアムの臨床研究者間での緊密な協同体制の結果であった」
Georgetown Lombardi Comprehensive Cancer CenterとMedStar Georgetown Cancer Instituteの責任者Louis M. Weiner, M.D.は、「今回の症例での共同作業には、我々のコンソーシアムの専門家が関与しており、そのチームワークによって、この患者を取り巻く事柄に取り組んだ。がんを寄せつけない状態を保ち続けることは可能であるという望みをもって、チームは今後も患者を綿密に追跡調査していく」と語る。
患者は17歳であった2017年に、初めて脊椎沿いの軟部組織肉腫の診断を受けた。化学療法、放射線療法、標準治療の薬物療法が行われ、また部分寛解を得るための外科手術が実施された。
患者は重度の疼痛のため2019年4月に入院した。この時、がんはステージⅣに進行していた。
類上皮肉腫のほとんどの症例は、SMARCB1として知られているタンパク質コード遺伝子の不活化を示す。
この不活化は、腫瘍増殖を促進する生物学的連鎖反応を効率的に引き起こすINI1(腫瘍抑制タンパク質をコードする遺伝子)の抑制につながる。
Georgetownの専門家とチームを組んでいたJohn Theurer Cancer Centerの医師らが、2019年5月にイピリムマブ(抗CTLA4)とニボルマブ(抗PD1)の2つのチェックポイント阻害剤を試す例外的使用での認可を得た。
10月までに、患者は完全寛解を示した。この患者が最後に受診した2020年6月時点では、通常の活動を再開しており、通常の理学的検査を受け、基本的に無症候性である。
報告書によると、患者の腫瘍はINI1の欠如に依存していた。しかし、チェックポイント阻害剤が免疫系の所在を明らかにし、身体がもつ自然の防御力の作用を再びがん細胞が受けやすくなるようにした。
研究者らは、患者のがんの劇的な逆転の詳細については、特にチェックポイント阻害剤の前後に化学療法がどのような効果をもたらした可能性があるのかをさらに調査する必要があると記している。
Georgetown Lombardiで腫瘍学および小児科の教授を、またMedStar Georgetown University Hospitalの小児科血液学/腫瘍学のチーフを務める上席著者のJeffrey Toretsky, M.D.は以下のように述べている。
「免疫チェックポイント阻害剤によってそれまでは不可能であった転帰をもたらす方法が見出されており、我々はこのチェックポイント阻害剤の臨床的有用性を示唆する正確な指標について把握しようと試みているところである。この患者によってこの探査の窓が開かれた。このように患者の治療に成功したことを誇りに思う」
また、Hackensack Meridian Healthの腫瘍学のチーフ医師のAndre Goy, M.D., M.S.は「我々の研究が最も病気が重い患者に対して、何ができるかを我々は見たいと強く思っている。そして、ほぼどのようなことも可能になりつつあるように思われる」と語る。
https://ecancer.org/en/news/18868-immunotherapy-combo-halts-rare-stage-4-sarcoma-in-teen
2020年10月19日公開