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24 Feb 2021
夜間に屋外で高レベルの人工光が放たれる地域の居住者は、甲状腺がんを発症するリスクが高くなる可能性がある。この所見は、米国がん学会(American Cancer Society)の査読付きジャーナルCANCER誌のオンライン版でかねてより発表された試験から得られたものである。
過去一世紀の間に、特に都市の夜景は電気照明が急速に広がったため、劇的に変化した。また、衛星で観測された夜間光のレベルの上昇と乳がんのリスク増大との関連性が複数の疫学的研究で報告されている。
一部の乳がんはホルモン依存性というベースの部分で甲状腺がんと共通する部分がある可能性があることから、テキサス大学ヒューストン校公衆衛生学部ヘルスサイエンスセンターのQian Xiao博士率いる研究チームは、1995~1996年に50~71歳の米国人の成人を組み入れたNIH-AARP Diet and Health試験の参加者を対象に調査し、夜間光とその後の甲状腺がんの発症との関連性に着目した。
治験責任医師は参加者の現住所で夜間光のレベルを概算するため、衛星画像データを分析し、州のがんレジストリデータベースを調査して2011年までの甲状腺がんの診断例を特定した。
平均12.8年間のフォローアップ調査の対象となった参加者464,371例のうち、856例に甲状腺がんの診断が下された(男性384例、女性472例)。
夜間光の最小五分位群と比較すると、最大五分位群では甲状腺がんを発症するリスクが55%高く関連性を示していた。
この関連性は、主に乳頭状甲状腺がんと呼ばれ、甲状腺がんで最も多くみられる病型が主因であり、男性に比べ女性で強く認められた。
女性では、この関連性は身体の他の部位への伸展の徴候がみられない限局性のがんで強く認められた。一方、男性では、この関連性は病期が進行するほど強くみられた。
この関連性は、社会人口統計学的特性やBMIが異なる参加者全体で、腫瘍サイズの差異と類似しているところがみられた。
研究グループは、今回の所見を確証するためには、さらに疫学研究を実施する必要があると言及している。この点が確証されると、夜間光と甲状腺眼の関係性の根底にあるメカニズムを理解することが重要となる。
研究者は、重要な抗腫瘍効果の可能性があるエストロゲン活性の調節因子であるメラトニンを夜間光が抑制する点に注目した。また、夜間光は、さまざまなタイプのがんの危険因子である身体の体内時計(すなわち概日リズム)の崩壊につながる可能性がある。
「我々の研究は観察研究であり、因果関係を確定する目的でデザインされていないため、夜間の屋外の高レベルの光が甲状腺がんのリスク上昇につながるか否かについては明らかにできない。ただし、夜間の光曝露や概日リズムの崩壊が与える影響を裏付ける立証済みのエビデンスを考慮すると、我々の研究は、夜間光とがんおよびその他の疾患との関係性をさらに検討しようという研究意欲をかき立てるものとなるだろう。
近年、光害を減らす取り組みが一部の都市でみられているが、今後も研究を進め、そのような取り組みがヒトの健康に影響を与えるか否か、またどの程度与えるのかといった点を評価する必要があるものと我々は確信している」とDr. Xiao.は語っている。
(2021年2月11日公開)