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18 May 2021
これは、古典的なスパイ小説に値する実際の構想である:Massachusetts General Hospital(MGH)、Dana-Farber Cancer Institute、およびその他のボストン地域の研究センターの研究者らは、通常は腫瘍を保護し、効果的な薬物療法を阻害する細胞の1種を石のように冷たい神経膠芽腫キラーに変えることによって、脳腫瘍の最も破壊的で攻撃的な形態である神経膠芽腫の立場を変えようとしている。
脳腫瘍の一種である神経膠芽腫は急性致死性の疾患である。ほとんどの患者は、脳外科手術、全脳放射線療法、化学療法などの積極的な治療にもかかわらず、診断から2年以内に死亡する。
免疫チェックポイント阻害剤(ICB)として知られるクラスの薬剤(悪性黒色腫、非小細胞肺がん、およびその他の固形腫瘍の患者の治療に革命をもたらした薬剤)も膠芽腫の患者に利益をもたらす可能性があるという期待にもかかわらず、これまでの臨床試験では、ICBはこの病気に対して効果がなかった。
ICBは、免疫系のブレーキを解除することで機能し、以前は不活性だった免疫細胞が、正常組織への損傷を最小限に抑えながら、変異したがん細胞を認識、攻撃、破壊できるようにする。
しかし、MGHの放射線腫瘍学部のEdwin L. Steele LaboratoriesのディレクターであるRakesh K Jain氏らが、Nature Communications誌に発表した研究で示しているように、膠芽腫は、腫瘍微小環境として知られる腫瘍の周囲および腫瘍内の景観を変化させ、血管、免疫細胞、および組織構造タンパク質を異常な膠芽腫促進環境に再編成し、ICBの作用を効果的に妨げることにより免疫系に大混乱をもたらす。
「これらの異常は免疫系の抑制環境を促進し、腫瘍境界で腫瘍と戦う免疫細胞をブロックし、制御性T細胞またはTregとして知られる腫瘍促進免疫細胞の浸潤を可能にする」と、Harvard Medical School (HMS) の放射線腫瘍学教授Andrew Werk Cook ProfessorでもあるJain氏は説明する。
「腫瘍微小環境の要素の中で、「われわれは、神経膠芽腫におけるTregの優先的な蓄積を利用して、それらの機能を治療的に変更し(リプログラミングとして知られる戦略)、がん細胞を保護する代わりに殺すようにしました」と、彼は続けた。
「これらの腫瘍にすでに存在するTregはリプログラムできるため、この戦略は抗腫瘍免疫細胞の追加の補充には依存しない。これは、脳腫瘍において免疫療法を成功させるためのもう1つのよくある障壁である」
研究者らは、腫瘍プロモーターを腫瘍と戦うタイプのT細胞にリプログラムする抗体(αGITR)を使用して、糖質コルチコイド誘発性TNFR関連受容体(GITR)と呼ばれる神経膠芽腫Tregの受容体(ドッキング部位)を標的とすることによりTreg変換を達成した。この抗体をICBと組み合わせると、ヒト神経膠芽腫のマウスモデルにおいて強力な延命効果が得られた。
「重要なことに、これらのマウスの一部は腫瘍を拒絶するだけでなく、膠芽腫に対する長期免疫を発達させた」と、Steele Labsの副所長であるDai Fukumura氏はコメントした。
これまでの研究はヒト神経膠芽腫のマウスモデルに限定されていたが、「われわれの研究は免疫療法への耐性を克服するための可能な解決策を提供し、患者に適用することができる」と、Steele Labsでポスドク研究員である、主執筆者Zohreh Amoozgar 氏は述べている。
「Tregが腫瘍プロモーターからがんキラーに再プログラムできることを示すことに加えて、われわれの研究は、免疫療法に対するTregを介した耐性を軽減することと、がんに対する免疫応答の主要なプレーヤーの1つであるCD8T細胞を再活性化することの両方によって強力な抗腫瘍効果を生み出すことができることも示した」と、Dana-Farber CancerInstituteの免疫学者であり、共同筆頭著者のHye-JungKim氏は説明する。
彼らの発見は、高レベルのTregを有する神経膠芽腫の患者において、現在の標準治療の有無にかかわらず、ICBと組み合わせたαGITR抗体の使用を支持していると、Jain氏は述べた。
https://ecancer.org/en/news/20276-tumour-promoting-immune-cells-retrained-to-fight-most-aggressive-type-of-brain-cancer
(2021年5月12日公開)