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e-cancer:脳および神経系 ある研究グループがリンパ腫の致死的なタイプの治療可能性が見込まれる新規クラスの創薬に成功

02 Jul 2021

非ホジキンリンパ腫の致死的なサブタイプであるマントル細胞リンパ腫(MCL)の大多数の症例に関与している「マスタースイッチ」を阻害する新クラスの薬剤をMount Sinaiの研究者らが見出した。

Clinical Cancer Research誌で本研究チームが発表した研究報告によると、SOX 11癌遺伝子の低分子阻害剤として知られている薬剤が体外試験でヒト細胞中のMCL腫瘍発生に毒性を示した。

この効果が生存中の患者で再現された場合、この創薬は、既存の治療薬に高度耐性化を示す疾患の新たな治療法につながる可能性がある。

上席著者を務めるIcahn School of Medicine at Mount Sinai血液学および腫瘍内科学部のSamir Parekh, MDは、次のようにコメントしている。「マントル細胞リンパ腫患者の最大90%に発現するSOX 11タンパク質は、非常に興味深い治療のターゲットである。しかし、これまで、低分子阻害薬で特定されたものはなかった。我々は、癌遺伝子に結合可能で、DNAとの相互作用を乱し、抗MCL細胞毒性を通して注目すべき効率でリンパ腫細胞を実際に死滅させることが可能な3つの構造的に関連性のある化合物を発見した」

マントル細胞リンパ腫は、世界的に最もよくみられる血液学的悪性疾患の非ホジキンリンパ腫の全症例の約6%を占めている。

化学療法や免疫療法の進歩にもかかわらず、MCL患者の生存期間の中央値は7~8年であり、この癌の第二選択薬である低分子阻害薬のイブルチニブなどによる治療を行った後でも再発が続く。

細胞の治療抵抗性を克服できる化合物を開発するうえで重大な障壁は、DNAと結合し遺伝子をオン/オフするマスタースイッチとして作用する転写因子のSOX 11が概して”undruggable”(創薬困難)とみなされている点である。

そこで、Dr. Parekhは創薬可能性を証明しようと、Mount Sinaiの薬理学部や腫瘍学部の研究室のほか、Mount SinaiのCenter for Therapeutics Discovery内のAneel Aggarwal, PhDの構造生物学の専門部署、Marta Filizola, PhDのコンピュータ支援の創薬専門部署、Jian Jin, PhDの医薬品化学の専門部署と協同研究を開始した。研究チームは、DNAと相互作用するSOX 11の表面で1,200万を超える化合物のスクリーニングを行った後、SOX 11とDNAの相互作用を乱すことからマントル細胞リンパ腫の発現機序を阻害すると予測される多数の低分子を同定した。

実験的検証を行ったところ、これらの分子が持つ3つの阻害的な役割が確認された。

1つは特に、ex vivoラボ試験(人体外でヒト細胞を使用して実施)で、BTKが持つ抗MCL細胞毒性とリン酸化の阻害を明らかにした。これはBリンパ球細胞のマントル細胞リンパ腫への悪性形質転換を引き起こすシグナル伝達カスケードの一部である。

Mount Sinaiの研究では、単剤としての分子の有効性やSOX 11阻害薬と結合するイブルチニブのシナジーが明らかになった。これらのどちらかが、MCLの治療につながる治療戦略としての可能性を備えている。

「これらの低分子阻害薬は、SOX 11に起因する他の悪性疾患(上皮卵巣腫瘍、髄芽腫、神経膠腫、および基底様乳癌など)の病因を理解するための有益なツールにもなる可能性がある」とDr. Parekhは語る。同氏は非常に幅広い背景事情を踏まえて、今回の研究グループの所見が他の研究者による革新的な研究を促し、SOX 11のような転写因子の研究に刺激となることを期待している。「多くの転写因子は、研究者がターゲットとする可能性のあるさまざまな腫瘍の中に存在している。我々の研究から実証されたことは、それらを創薬可能なものとする有効な方法が実際にあるということである」

https://ecancer.org/en/news/20512-researchers-discover-a-novel-class-of-drugs-that-may-help-treat-a-deadly-type-of-lymphoma

(2021年6月22日公開)

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