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25 Oct 2021
細胞表面接着受容体を細胞のある部分から別の部分に循環させることによってヒト細胞が移動することは何十年も前から知られている。
インテグリンと呼ばれるこれらの接着受容体は、例えば創傷治癒中の正常な細胞運動にとって重要である。
初期の研究では、がん細胞がこれらの受容体を循環させて周囲の組織に拡散し、ほかの臓器に転移するための、とくに効率的な方法を進展させたことも示されている。
フィンランドのUniversity of TurkuのJohanna Ivaska教授の研究グループは、非常に攻撃的な、いわゆるトリプルネガティブ乳がん細胞がインテグリンを循環させて組織内を移動するために使用する新しいメカニズムを発見した。
この研究はNature Cell Biology誌に掲載された。
「人間の細胞は、最初に細胞膜の一部を吸収し、次にそれをリサイクルすることによって、常に表面を更新する。 このいわゆるCGエンドサイトーシスメカニズムは、常に移動するベルトコンベヤーのようなもので、可溶性栄養素を細胞に輸送する」とIvaska教授は説明する。
Ivaska教授の研究グループの博士課程修了後の研究者Paulina Moreno-Layseca氏と博士候補Niklas Jäntti氏は、乳がん細胞が分子swiprosin-1を使用して、インテグリン接着受容体をこのベルトコンベヤーへ誘導することを発見した。
このベルトコンベヤーメカニズムを乗っ取ると、がん細胞はインテグリンの循環を促進し、細胞の移動と転移の形成を増加させることができる。
何百もの乳がん検体を研究することにより、研究者らは、腫瘍におけるswiprosin-1分子の高発現が転移の形成および乳がんの悪性腫瘍と有意に相関することを発見した。
「われわれの発見は、インテグリンの機能にまったく新しい視点を開き、がん細胞が体全体に広がるために使用可能な新しいメカニズムを明らかにする。 これらの結果は、将来のがん研究の方向性に影響を与えるだろう」と、Ivaska教授は述べている。
(2021年10月19日公開)