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e-cancer:がん全般 免疫系のナチュラルキラー細胞を活性化し、がんなどの病気から守る方法を解明

12 Apr 2022

新たな研究により、生体の自然免疫反応(第一次免疫反応)の一部であるナチュラルキラー(NK)細胞と腫瘍細胞、ウイルス感染、臓器移植との相互作用を制御する因子が明らかになった。

この成果は、マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者らが発見し、Science Advances誌に掲載されたもので、がん、病原菌の侵入、自己免疫、炎症性疾患、移植後の拒絶反応から人々を守るために利用できる可能性がある。

NK細胞は血液中の標的細胞を効果的に死滅させることができるが、皮膚、消化管、膵臓や乳房のような組織や臓器内の感染細胞およびがん細胞を死滅させることはできない。

「この臓器内のNK細胞攻撃機能の重大な欠如は、過去60年間NK細胞生物学分野を当惑させてきた」と、MGHセンターがん免疫学および皮膚生物学研究センターのがん免疫学者、皮膚病学者、および治験責任医師であるShawn Demehri、MD、PhDは述べている。

Demehri氏の近年の研究により、NK細胞がなぜ臓器内で標的細胞を死滅させる能力を失うのかについての新たな解説が明らかになった。臓器は高密度の細胞外マトリックス(ECM)に埋め込まれた細胞でできている。ECMは、臓器の構造や整合性を維持するための足場となるタンパク質の精巧なマトリックスである。

NK細胞とECMタンパク質間の相互作用により、NK細胞が血管を出て臓器に侵入すると、キラー細胞からヘルパー細胞へと機能が即座に切り替わる。ヘルパー細胞であるNK細胞は、隣接する他の免疫細胞を活性化し、支援する分子を産生する。

Demehri氏らのチームは、血液中のNK細胞の急速なキラー反応と組織や臓器内でのヘルパー細胞の遅延反応は、ヒトの寿命を延長させるための進化上の淘汰圧により説明することができると仮定している。

「血液の感染には、宿主の生存確保のためにNK細胞により即時に制御されることが必要とされる。しかし、抹消組織内のNK細胞の直接的なキラー機能を抑制することで、局所的な損傷に対する過剰反応を防ぎ、患者が過剰な組織損傷や慢性炎症を起こしやすくなる可能性がある」とDemehri氏は述べた。

「一方、末梢組織でのウイルス感染に対しては、より標的を絞った、適切で強力な適応免疫反応を発達させるためのヘルパー機能が最も適していると思われる」

皮膚移植とマウスメラノーマモデルを用いたこの最新の研究において、コラーゲンとエラスチン(臓器内に豊富に存在するな主要なECMタンパク質)が、組織およびがんにおけるNK細胞機能の重要な制御因子であることを研究者らは特定した。

「NK細胞が末梢組織でどのように制御されるているかという我々の根本的な発見は、さまざまな健康状態の患者に対して幅広い意味合いを持つ」と、MGHのがん免疫学センターポスドクであり、共著者であるMaulik Vyas、PhDは述べている。

「臓器内のNK細胞とECM間の相互作用を調節する方法は、固形がん、ウィルス感染、炎症性疾患、自己免疫疾患ならびに繊維症に有効な新規治療法を提供し、臓器移植を改善することができる」

例えば、高血圧治療に一般的に使われる薬剤ロサルタンは、腫瘍内のコラーゲン沈着を阻害することで、以前は抵抗性であったメラノーマがNK細胞の攻撃に敏感になる可能性があるということを研究者らは初めて明らかにした。コラーゲンは乳がんや膵臓がん等の固形がんで豊富に存在することが多いため、この知見は重要である。

「我々のデータは、固形がんの最適な治療のために、コラーゲンとNK細胞の相互作用を阻害し、現在の免疫療法と併用するという概念を強く支持する」とVyas氏は述べている。

「そして、この研究結果は、ECMタンパク質が健康や疾患においてNK細胞やその他の免疫細胞反応をどのように制御するかということを完全に理解するための今後の研究に対する強力な論拠をもたらす。これにより、多種多様な疾患の治療において、ECMタンパク質と免疫系の相互作用を利用する将来の治療法の開発は大きく進展するであろう」

https://ecancer.org/en/news/21672-study-reveals-how-to-activate-the-immune-systems-natural-killer-cells-to-protect-against-cancer-and-other-diseases

(2022年3月16日公開)

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