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28 Jun 2022
Mount Sinaiの研究者らは、一部の患者に深刻な副作用をもたらす可能性のある血液がんの重要な新治療法に対する良好な反応を示す予測遺伝子を初めて特定した。
Selinexorは、血液がんの多発性骨髄腫に対する多くの画期的な治療法の一つだが、最も恩恵を受ける患者に的を絞って使用することは、これまで困難であったことが、JCO Precision Oncology誌に6月に発表された研究で明らかになった。
Mount Sinaiの研究者らは、selinexor投与患者の多発性骨髄腫腫瘍のRNA配列を決定し、陽性反応を示した患者で活性化される3つの遺伝子のシグネチャーを同定した。
研究グループは、FDA(米国食品医薬品局)の承認につながった国際的な臨床試験に参加した、独立した患者のグループにおいて、このシグネチャーを検証した。
Mount SinaiのOncological Sciences at The Tisch Cancer Institute、Genetics and Genomic Sciences at the Icahn School of Medicineの助教であり、上級著者の一人であるAlessandro Lagana博士は、「このシグネチャーは、特に初期の治療ラインにおいて、selinexorベースの治療が最も有効である患者を特定できるため、臨床的に重要な意義を持つ」と述べた。
本試験のもう1人の統括著者で、Mount SinaiにあるTisch Cancer InstituteのTranslational Research in MyelomaのディレクターであるSamir Parekh医師は、「今回の研究成果は、骨髄腫の臨床上の重要な課題であるCAR-T療法後の再発など、実際に、これらの薬剤を正確に適用するために、少数の遺伝子パネルを用いて標的薬剤の患者選択を改善するための基礎を提供する」と付け加えた。
Selinexorは、多発性骨髄腫に対してFDAが承認した他の治療法が無効であった患者に有用であることが証明されている。
しかし、服用した患者の大多数が副作用を経験し、時には重篤な場合もあるため、積極的に反応する患者を特定することが重要であり、他の治療法に失敗していない患者への使用拡大の可能性がある。
Mount Sinaiの研究者らは、本剤を投与した多発性骨髄腫患者約100名の腫瘍の塩基配列を解析し、WNT10A、DUSP1、ETV7という3つの遺伝子を同定した。
また、selinexorに良好な反応を示した脳腫瘍グリオブラストーマの患者にも、この3つの遺伝子シグネチャーを見出した。
この研究の結果、Mount Sinaiでは、selinexorが有効な患者を特定するために、このシグネチャーの検査をさらに進め、薬剤の使用資格を持つ患者や、まもなく開始される精密医療臨床試験に参加する患者を対象とした研究を開始している。
(2022年6月15日公開)