ニュース
30 Sep 2022
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による治療は最も致死的となりうる皮膚がんであるメラノーマに対する治療法のひとつであり、腫瘍や免疫細胞が発現して免疫システムによるがん細胞の排除を妨げるタンパク質を阻害する。
この治療法は進行期メラノーマ患者において一定の臨床的成功を収めているが、その有効性は患者の治療への反応を予測する信頼性の高い指標に依存している。
現在、メラノーマに対するICI療法においてFDAが承認している唯一のバイオマーカーは腫瘍遺伝子変異量(TMB)アッセイだが、これがICIと関連するメカニズムは依然として不明である。
しかし、このたび新たな研究により高度なコンピューター技術を駆使して治療効果を予測する信頼性の高い新規バイオマーカーのエビデンスが示された。
Nature Communications誌に掲載された論文で、ウィスター研究所Ellen and Ronald Caplan Cancer Centerの分子・細胞がん発生プログラムのassistant professorであるNoam Auslander, Ph.D.とAuslander研究室に所属する大学院生Andrew Patterson氏はメラノーマに対するICI療法の新たな効果予測因子を同定した。
特に、白血球とT細胞の増殖制御過程における遺伝子変異は、メラノーマ患者の複数の異なるデータセットにおいて、ICI療法への反応を確実かつ安定的に予測するバイオマーカーとしての可能性を示している。
「この研究は免疫療法の効果予測のためのより優れた、生物学的に解釈可能なゲノム情報を明らかにすることを目的としている」とAuslander氏は述べた。
「ICI療法に対する治療反応がみられる可能性が高い患者を選択し、反応を高める要因やその数を増やすのに役立つ要因を理解するためには、より精度の高いバイオマーカーが必要である」
研究者らは、機械学習と一般に公開されている非識別化臨床データを用いて、あるメラノーマ患者がICI療法に反応し、他の患者が反応しない理由を調査した。
本論文の筆頭著者であるPatterson氏は研究方法として、あるデータセットで機械学習モデルを訓練して患者がICI療法に反応するかどうかを予測し、その後、そのモデルが他の複数のデータセットでこの治療に対する反応または耐性を継続的に予測できることを確認したと説明した。
研究チームは、白血球とT細胞の増殖制御プロセスにはICI療法の奏効と抵抗性の原因となるいくつかの遺伝子変異があることを発見した。
この知見は、メラノーマ患者の治療反応を高める、あるいは治療抵抗性を軽減するための標的を特定するのに有用となる可能性がある。
「我々は現行の臨床で行われている標準的な方法よりも患者がICI療法に反応するかどうかをより正確に予測できただけでなく、ICI療法への反応と抵抗性の背後にあるメカニズムをさらに理解するのに役立つ生物学的情報を抽出することができた」とPatterson氏は説明している。
研究者らは予測精度の向上、ICI療法に対する患者の抵抗性や反応性の背景にある生物学的メカニズムのさらなる解明、また本論文で明らかになったプロセスが他のがん種に対するICI療法の反応性の予測因子として機能するかどうかを見極めるため、さらなる研究を続ける予定である。