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28 Nov 2022
Radiological Society of North Americaの年次総会でMount Sinaiの研究者らが発表した大規模な国際研究によると、低線量CT検診により早期肺がんの診断をすると、20年間のがん患者の生存率が劇的に向上することが明らかになった。
その結果、CT検診によって早期に肺がんと診断された場合の20年生存率は80%であることがわかった。肺がん全体の平均5年生存率は18.6%であり、これは肺がんの16%しか早期に診断されないためである。肺がん患者の半数以上は、診断を受けてから1年以内に死亡しており、がんによる死亡原因の第1位となっている。症状が出たときには、手遅れになっていることが多い。
今回の知見は、外科的切除で治る程度の小さいうちにがんを発見するには、定期的な早期検診が重要であることを示す最新のものである。残念ながら、検診を受けることができるのは、対象者の6%未満にすぎない。
この研究の筆頭著者であるニューヨーク州Icahn School of Medicine at Mount Sinaiの診断・分子・介入放射線学教授であり、Early Lung and Cardiac Action ProgrammeのディレクターであるClaudia Henschke博士は、
「スクリーニングはがんの発生を防ぐものではないが、肺がんを外科的に除去できる初期の段階で発見する重要な手段である」と述べている。
「結局のところ、検診に関心のある人は、不幸にも肺がんになったとしても、早期に発見すれば治るということを知っておく必要がある」
標的療法や免疫療法による、より進行したがんの治療は大きく進歩したが、肺がんによる死亡に対する最良の手段は、症状が出る前の低線量CT検診による早期診断であると、研究著者らは述べている。
「症状はおもに末期の肺がんで発生する」と、Henschke博士は述べている。「したがって、早期の肺がんを見つける最良の方法は、毎年の検診プログラムに登録することである」
U.S. Preventive Services Task Forceは、喫煙歴が20年(1日1箱以上20年間)で、現在喫煙しているか、過去15年以内に禁煙した50歳から80歳の成人に対して、低線量CTによる肺がん検診を毎年実施することを推奨している。
この研究は、International Early Lung Cancer Action Program(I-ELCAP)でスクリーニングを受け、後に早期肺がんと診断された患者1,285名の20年生存率を追跡したものである。
参加者の全生存率は80%だったが、非固形がんの肺結節を持つ139名と、一部固形化した結節を持つ155名の参加者の生存率は100%だった。
固形結節を持つ991名の参加者の生存率は73%であった。10mm以下のステージ1Aがんの参加者の20年生存率は92%であった。
Henschke博士らは、長年にわたり低線量CT検診によるがん発見の有効性を研究してきた。早期肺疾患に対するCT検診の発展を目指した研究者らの努力により、I-ELCAPの創設に至った。1992年に開始されたこの多施設共同研究プログラムは、80を超える施設から87,000名以上の被験者が登録されている。
2006年、研究者らはCT検診でがんが発見された患者の10年生存率が80%であることを確認した。今回の研究では、20年生存率に注目した。
今回の発表では、われわれの検診プログラムの参加者で、肺がんと診断され、その後治療を受けた患者の20年間の追跡調査である」と、Henschke博士は述べた。「重要な発見は、これほど長い時間間隔があっても、肺がんで死亡していないことである。そして、たとえ時間が経って新たな肺がんが見つかったとしても、毎年検診を続けていれば問題ないだろう」
共著者は、Icahn Mount SinaiのLung Biopsy ServiceディレクターDavid F. Yankelevitz氏、Weill Cornell Medical Center内科学教授Daniel M. Libby氏、Weill Cornell Medical Center内科学臨床教授James Smith氏、Weill Cornell Medical Center のMark Pasmantier氏、I-ELCAPの上席生物統計学者Rowena Yip氏である。
(2022年11月22日公開)