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06 Dec 2022
自家腫瘍溶解液添加樹状細胞(autologous tumour lysate-loaded dendritic cell)ワクチン接種により、新規診断の膠芽腫患者の生存率が7.3%、再発膠芽腫患者の生存率が6%増加する可能性があることが、JAMA Oncology誌で明らかになった。
本試験では、米国、カナダ、英国、ドイツにおいて、第3相無作為化二重盲検臨床試験が実施された。
患者331名が試験に参加し、自己腫瘍溶解液添加樹状細胞ワクチン接種とプラセボに2対1の割合で無作為に割り付けられた。患者1,366名が外部コントロール集団に含まれた。
また、この試験に参加したすべての患者が、手術、放射線治療、化学療法といった標準治療を受けた。
本試験では、新規診断の膠芽腫患者のOS中央値は、DCVax-Lでは無作為化から19.3か月、手術時から22.4か月であったのに対し、対照群では無作為化から16.5か月であった(HR, 0.80; P = 0.002)。
新規診断の膠芽腫患者を対象としたこの研究では、ワクチン摂取した患者の60か月後の生存率が13%であったのに対し、外部コントロール群の生存率は5.7%であることがわかった。
再発神経膠芽腫患者では、ワクチン接種した患者の30か月後の生存率が11.1%であるのに対し、外部コントロール群の生存率は5.1%であることが確認された。
このワクチンを接種した患者は、ワクチンコース終了後何年も生存しており、体が有効な記憶免疫反応を作り出すことが示唆されている。
これらの結果は、がんワクチンが幅広い臨床現場に適用できる可能性を示唆している。
樹状細胞を活性剤とし、抗原の運搬手段に用いることで、他の薬剤を用いた場合よりも広い範囲の免疫反応を活性化することができる。
膠芽腫の極めて高い不均一性は、標準化された抗原の代わりに自己由来の抗原を利用することで対処することができる。
さらに、自己抗原を使用することで、患者の腫瘍に実際に存在する抗原をターゲットにした治療が可能になる。
腫瘍溶解液の使用は、抗原の全レパートリーを標的とすることができることを意味する。これは、少数の抗原しか標的にしていない場合に観察される、標的抗原の周囲で患者の腫瘍が変異するのを防ぐことができる。
この研究の著者らは、ワクチンによる治療は、チェックポイント阻害剤、標的治療、化学療法、サイトカイン、または腫瘍溶解性ウイルス治療など、他のさまざまな治療薬と併用できる可能性があることを示唆している。
このワクチンは、有害事象に脆弱な患者でも治療が可能な良質の安全性プロファイルを有していることが確認された。
さらに、ワクチンの安全性により、副作用を抑えるための余分な治療が不要になり、そのコストも抑えることができる。
本研究の結果は、自己腫瘍溶解液添加樹状細胞ワクチン接種が、新規診断の神経膠芽腫患者や再発神経膠芽腫患者の生存期間を延長する安全かつ有効な方法である可能性を示唆している。
(2022年11月24日公開)