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03 Apr 2023
近年、新しい標的治療薬が開発されたにもかかわらず、化学療法は進行がんを患う患者の治療に最も頻繁に使用される治療法であることに変わりはない。
化学療法抵抗性は、がん患者の治療失敗や死亡の主な原因の一つである。
上皮細胞が隣接する細胞から剥がれ落ち、浸潤性を獲得する上皮間葉転換(EMT)が、抗がん剤治療に対する抵抗性の獲得に関与していることが示唆されている。
しかし、EMTを呈するがん細胞が抗がん剤治療に抵抗するメカニズムは現在のところ不明である。
WELBIO研究員であり、Stem Cells and Cancer Laboratory所長であるUniversité Libre de Bruxelles教授のCédric Blanpain教授(医学博士)は、RHOJというタンパク質が、化学療法によって生じたDNA損傷の修復を促進することによって、EMTを呈するがん細胞が抗がん剤治療に抵抗できることを発見し、Nature誌に発表した。
Maud Debaugnies氏らは、EMTを呈するがん細胞が化学療法に抵抗性を示すことを明らかにした。
その結果、RHOJの発現は、化学療法抵抗性の細胞で特に高いことがわかった。
そして、RHOJを沈黙させることで、がん細胞が化学療法に敏感になることを明らかにした。
本研究の筆頭著者であるMaud Debaugnies氏は、「がん細胞が化学療法に抵抗するメカニズムを理解できたことは、がん治療における新規かつより効果的な治療戦略開発への道を開くものであり、特にエキサイティングだった」とコメントしている。
Maud Debaugnies氏らは、RHOJがどのようなメカニズムでがん細胞を化学療法に抵抗させるのかを研究した。
化学療法は、がん細胞のDNA損傷を誘発し、がん細胞の死滅を活性化させる。
その結果、RHOJが化学療法によって誘導されるDNA損傷修復経路を活性化し、がん細胞がDNA病変を修復して細胞死を免れることを発見した。
本研究の責任者であるCedric Blanpain教授は、「1つの遺伝子を阻害することでがん細胞が化学療法に敏感になるという今回の発見は、EMTを呈するがん患者の化学療法に対する抵抗性を低下させるRHOJを標的とした薬剤開発のための新しい道を開く」とコメントしている。
https://ecancer.org/en/news/22833-the-discovery-of-a-protein-controlling-resistance-to-chemotherapy
(2023年3月23日公開)