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10 May 2023
UC’s Department of Cancer BiologyのJun-Lin Guan氏の研究室の研究者らは、乳がん細胞と乳がん幹細胞の組み合わせ治療のターゲットとなりうるものを発見した。
Guan研究室の博士研究員であるKanakaraju Manupati氏は、NuMA1というタンパク質を調査した。
このタンパク質は乳がんにおいて発現量が増加することが知られているが、乳がんのサブタイプの腫瘍内で果たす特定の役割はよくわかっていなかった。
Manupati氏の研究では、3種類の乳がん細胞株の動物モデルでNuMA1を欠失させると、腫瘍の成長が抑えられることを発見した。
乳がん幹細胞からNuMA1を取り除くと、転移(がんの広がり)が抑制されたことから、乳がんのバルク細胞と幹細胞の両方において、がんの増殖と広がりに関与していることが示唆された。
「興味深い発見は、NuMA1が乳がんの異なるサブタイプにおいて様々な役割を描いていることが観察されたことである」と述べた。
現在、NuMA1を直接標的とする薬剤はないが、PIM1という酵素によって制御されている。研究チームは、PIM1を阻害する薬剤の有効性を検証し、酵素阻害剤が、試験した3つのサブタイプの乳がんすべてにおいて、腫瘍の形成とがんの広がりを抑えることを発見した。
この治療法は、細胞が成長するために栄養を分解するプロセスを阻害するオートファジー阻害剤と併用すると、さらに効果的だった。
Manupati氏は、「この併用法を用いたところ、乳がんの腫瘍形成だけでなく、転移も有意に減少することが確認された」と述べている。
NuMA1は、乳がんバルク細胞と乳がん幹細胞の両方で役割を果たしていることが分かっており、有望な標的候補であるとManupati氏は述べている。
「乳がんの転移を防ぐには、乳がん細胞だけでなく、乳がん幹細胞の両方を殺す必要がある」と述べた。「したがって、乳がんを完全に予防するには、これらの集団の両方をターゲットにする必要がある」
今後は、PIM1とオートファジー阻害剤を併用する治療法の応用の可能性や、さまざまな乳がん幹細胞でNuMA1がどのように作用するかを引き続き研究していきたいとManupati氏は述べた。
(2023年4月20日公開)