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e-cancer:がん全般 細胞分裂の残存物ががんの拡大に関与している可能性

26 Oct 2023

かつては細胞のゴミ箱と考えられていた中心体の残存物(midbody remnant)と呼ばれる細胞の小さな泡は、実は他の細胞の運命を変える力、つまりがんに変える力さえも持つ遺伝物質を詰め込んでいる。

ウィスコンシン大学マディソン校の遺伝学教授であるAhna Skop氏によれば、有糸分裂のプロセスで、1つの細胞が2つに分裂するとき、結果として生じるのは2つの娘細胞だけではないということは、多くの人にとって驚くべきことである。

「1つの細胞は3つに分裂する。2つの細胞と、新しいシグナル伝達細胞小器官である中心体の残存物1つである」とSkop氏は述べる。

「我々を驚かせたのは、中心体には遺伝情報であるRNAが多くあり、細胞分裂とはあまり関係がないが、細胞間の情報伝達で機能している可能性が高いということである」

Developmental Cell誌に発表された研究において、Skop氏の研究室とパリのパスツール研究所、ハーバード大学医学部、ボストン大学、ユタ大学の共同研究者らは、中心体(細胞分裂の際に娘細胞の間に形成される)の内容を分析し、細胞分裂後に遊離した中心体の残骸の相互作用を追跡した。

その結果、中心体ががんを全身に転移させる媒介物であることが指摘された。

「人々は、中心体は細胞分裂後に死滅するかリサイクルされる場所だと考えていた」とSkop氏は述べる。

「しかし、ある人のゴミは別の人にとっては宝である。中心体は、細胞がコミュニケーションをとるための小さな情報パケットである」

中心体が細胞のシグナル伝達や細胞増殖に関与していることは以前から研究されていたが、Skop氏とその共同研究者らは、中心体の残存物の内部を調べて、さらに多くのことを知りたいと考えた。

研究者らが中心体の内部で発見したのは、RNA(細胞内でタンパク質を生成するために使用されるDNAの一種の作業用コピーのようなもの)と、そのRNAをタンパク質に変えるために必要な細胞機構であった。

中心体のRNAは、細胞分裂のプロセスではなく、多能性(身体に存在するさまざまな種類の細胞のいずれかに成長する能力)やがん化(がん腫瘍の形成)など、細胞の目的を導く活動に関与するタンパク質の設計図である傾向がある。

「中心体の残存物は非常に小さい。1ミクロン、つまり100万分の1メートルである」とSkop氏は述べる。

「しかし、それは小さな月着陸船のようなものである。分裂細胞からの情報を維持するために必要なものすべてを備えている。そして、有糸分裂部位から離れ、血流に乗り、遠く離れた別の細胞に着地することができる」

中心体の残存物の多くは、それを放出した娘細胞の一つに再吸収されるが、月面着陸船のように遠くの表面に降り立ったものは、代わりに第3の細胞に吸収される可能性がある。

もし細胞が中心体を受け入れてしまうと、中心体に封入されたRNAを自分の設計図であるかのように誤って使い始める可能性がある。

これまでの研究では、幹細胞よりもがん細胞の方が、中心体とその運命を変える可能性のある積み荷を受け入れている可能性が高いことが示されている。

幹細胞は新しい細胞を生み出し、その多能性から貴重な細胞であるが、おそらく多能性を維持するために多くの中心体を吐き出す。

今後の研究では、中心体RNAの力を利用してがん細胞に薬剤を送達したり、がん細胞の分裂を阻止したりできる可能性がある。

「今回の研究結果は、がんの発見と治療にとって大きな目標となると考えている」と、National Institutes of Healthの支援を受けているSkop氏は述べる。

研究者らは、中心体と中心体の残存物にRNAを送り込む鍵となるArcと呼ばれる遺伝子を特定した。

はるか昔に古代のウイルスから取り込まれたArcは、脳細胞が記憶を作る過程にも関与している。

「Arcが失われると中心体のRNAが失われ、RNA情報が受容細胞に到達できなくなる」とSkop氏は述べている。

「この記憶遺伝子は、すべての細胞がRNA情報を伝達するために重要だと考えている」

Skop氏の研究室の上級研究員であるSungjin Park氏は、この新しい研究の筆頭著者である。

また、Skop氏と共同研究者らは、細胞培地や血清から中心体構造の分離を容易にし、がん診断を改善する2つの新しい方法についても特許出願中である。

https://ecancer.org/en/news/23801-remnant-of-cell-division-could-be-responsible-for-spreading-cancer

(2023年10月9日公開)

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