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27 Feb 2024
免疫療法は、すでに多くのがん種の治療法を改善しているが、研究グループは腫瘍に対する身体の免疫反応を高める方法を探求し続けている。
スペイン国立がん研究センター (CNIO) と12 de Octubre University Hospital(マドリード)の研究者らは、多発性骨髄腫を治療するための新たな免疫療法を開発した。この免疫療法は、現在優先治療として行われている免疫療法よりも有効であることが実験室で示されている。
この新たな免疫療法は、いわゆる桿状核球(STAb細胞)に基づいている。まだ臨床試験を通過していないため、患者に実践されるまでには少なくとも2年はかかるだろう。
この研究は、H12O-CNIO Cancer Immunotherapy Clinical Research Unitの主任研究者であるLuis Álvarez-Vallina氏が上席著者として、Science Translational Medicine誌に掲載された。この研究は、Josep Carreras Leukemia Research Institute、Hospital Clínic of Barcelona、University of Salamanca、Complutense University of Madridとの共同研究である。
STAb細胞
骨髄腫は、成人ではリンパ腫に次いで2番目に多い血液がんである。「近年、これらのがんはCAR-T細胞免疫療法で治療され始めている」とLuis Álvarez-Vallina氏は説明する。「これは、以前の治療手段に比べて大幅な改善を意味する。それにもかかわらず、患者の生存期間が長くなったにもかかわらず、かなりの割合の患者が再発を経験し、再発治療を必要としている」
従来のCAR-Tと比較した場合の利点
CAR-T細胞療法(キメラ抗原受容体T細胞療法、略してCAR-T)は、研究室で患者のTリンパ球免疫細胞(白血球)を改変し、腫瘍細胞を認識して闘う能力を獲得させるものである。
Science Translational Medicine誌に掲載された新たな研究では、この治療法とSTAb-T細胞を用いた別の細胞免疫療法が比較されている。どちらの場合も、研究室で改変された細胞は、腫瘍細胞にのみ存在するBCMAと呼ばれる同じ抗原を認識する。このようにして、改変された細胞はがん細胞のみを標的として攻撃する。
その結果、STAb-T細胞はCAR-T細胞よりも、体内の天然の非修飾T細胞もがん細胞と闘うように誘導し、治療効果を増幅させるという点でCAR-T細胞よりも優れていることが示された。
さらに、STAb-TはCAR-Tを減速させる要素を克服する。多発性骨髄腫患者の一部では、腫瘍量が多い場合、腫瘍細胞を識別するBCMA抗原が可溶型で検出される。抗原が可溶性であるという事実はCAR-T細胞の活性を阻害するが、STAb-T細胞には影響を及ぼさないということが新たな結果で示された。
免疫学的記憶
「最後に、STAb-T細胞が免疫学的記憶を生成することも証明した」とÁlvarez-Vallina氏は述べる。動物モデルでこの疾患を再現し、STAb-T細胞で治療後、研究チームはさまざまな臓器(主に脾臓と骨髄)から細胞を採取し、新しい記憶STAb-T細胞が産生されるのを観察した。
「これは重要なことである」とÁlvarez-Vallina氏は説明する。「体内のCAR-T細胞の持続性、つまり免疫学的記憶は抗腫瘍効果の程度に関連しており、したがって疾患のより良いコントロールに関連するからである。記憶細胞がSTAb-T免疫療法でも生成されることを我々が示したということは、おそらく治療を受けた患者において長期的な病勢コントロールが可能であることを示している」
研究グループは、この新しいSTAb-T免疫療法で患者を治療するために、マドリッドの12 de Octubre University Hospitalと共同で臨床試験を実施することを目指している。
(2024年2月15日公開)