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e-cancer:皮膚がん 皮膚の加齢変化がメラノーマの転移に関与している可能性がある

25 Mar 2024

Johns Hopkins Kimmel Cancer Centerの研究者らの報告によると、加齢に伴って生じる皮膚の硬化や弾力性の喪失は高齢者の転移性皮膚がんの発症率を高めている可能性がある。

Nature Aging誌に掲載されたこの研究では、加齢による皮膚の硬化によってICAM1と呼ばれるタンパク質の発現が亢進することが示された。ICAM1値の上昇は腫瘍内の血管成長を刺激し、これが腫瘍の成長を助ける。また、血管が”漏れやすく”なるため、腫瘍細胞が容易に脱出し、全身へ拡散するのを可能にしてしまう。

「加齢に伴い、皮膚の硬さは変化する」と、Kimmel Cancer Centerの研究所のassociate directorでJohns Hopkins University医学部腫瘍学教授のAshani Weeraratna, Ph.D.は述べている。「それは物理的な関連だけでなく、シグナル伝達にも影響し、新生血管の増加や血管機能の障害にもつながる可能性がある」

Melanoma Research Foundationによると、メラノーマは最も致死率が高い皮膚がんである。2024年には、20万人以上のアメリカ人がメラノーマの診断を受けると予想されている。高齢の患者は若年の患者よりもメラノーマを発症しやすく、それによって死亡する可能性も高い。また、治療後の再発が多くみられ、体の他の部位に転移する可能性が高い。

Weeraratna氏の研究室では、加齢に伴う変化とメラノーマの転移やがんの治療抵抗性との関連に焦点を当てた研究が行われている。これまでの研究でWeeraratna氏らは、HAPLN1というタンパク質が細胞外マトリックスの構造を維持し、皮膚をしなやかに保つのに役立っていることを明らかにしてきた。高齢になるにつれてHAPLN1の発現は減少し、その結果、皮膚は硬くなる。

今回の新たな研究では、HAPLN1の減少が皮膚の硬化を引き起こし、これによって間接的にICAM1値を上昇させ、細胞シグナル伝達が変化することが示された。ICAM1の増加は血管新生、すなわち腫瘍に栄養を供給し成長を助ける新しい血管の成長を促進する。また、血管はまた漏出しやすくなるため、腫瘍細胞が原発部位から脱出しやすくなり、体内の離れた部位に転移しやすくなる。

しかし、高齢のメラノーマ発症マウスにICAM1を阻害する薬剤を投与したところ、このような変化が抑制され、腫瘍が縮小して転移が減少することが、Weeraratna氏らの研究チームによって証明された。研究チームは現在ICAM1の活性を研究しており、ICAM1に作用する正確性の高い標的薬の開発を目指している。

この発見は、加齢に関連した他のがんの治療に対する新しい治療法の開発につながる可能性がある。血管新生に寄与する成長因子を標的としたこれまでのがん治療はメラノーマを含む多くのがん種では治療効果がみられなかった。しかし、ICAM1は有望な新しい標的となる可能性がある。

Johns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのE.V. McCollum Chair of Biochemistry and Molecular Biologyであり、Bloomberg Distinguished ProfessorでもあるWeeraratna氏は述べる。「様々な種類の腫瘍において、それを標的とする新しい治療法を見つけることは、大きなインパクトを与える可能性がある」

ICAMについてさらに詳しく知ることは、高齢者の創傷治癒を理解する上でも重要な意味を持つ可能性がある。血管新生は、皮膚だけでなく循環器管系や脳の創傷治癒にも不可欠であるとWeeraratna氏は述べた。結果的に、この研究室の発見は循環器疾患や脳卒中の原因となりうる加齢に伴う変化を理解する上で重要な意味を持つ可能性がある。

「加齢に伴う血管新生を理解することは重要である」と同氏は述べた。

本研究の共著者は、Johns Hopkins UniversityのGloria E. Marino-Bravante氏、Alexis E. Carey氏、Laura Hüser氏、Agrani Dixit氏、Vania Wang氏、Supeng Ding氏、Rahel Schnellmann氏、Luo Gu、Yash Chhabra氏である。他の著者はUniversity of PennsylvaniaおよびDuke Universityに所属している。

本研究は米国国立衛生研究所から一部の資金援助を受けた(Weeraratna氏にP01CA114046、U01CA227550、R01CA232256の助成金)。

Weeraratna氏はReGAIN Therapeutics社の取締役である。この関係はJohns Hopkins Universityの利益相反ポリシーに従って管理されている。

 

https://ecancer.org/en/news/24399-age-related-changes-in-skin-may-contribute-to-melanoma-metastases

(2024年3月14日公開)

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