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05 Jul 2024
メラノーマの多くの症例では標的治療の効果は時間の経過とともに失われていく。
University of Zurich(UZH)とUniversity Hospital Zurich(USZ)の研究チームは、腫瘍細胞から分泌される因子がこの抵抗性の原因であることを発見した。
この発見は、より効果的な治療法への道を拓く可能性がある。
本研究はCell Reports Medicine誌に掲載された。
メラノーマは最も侵襲性の高い種類のがんの一つである。
近年、効果的な治療法が進歩してきたにもかかわらず、多くの患者でメラノーマは当初から抵抗性を示すか、治療中に抵抗性を示すようになる。
「したがって、メラノーマが抵抗性を発現するメカニズムを解明することは極めて重要である」とUZHのInstitute of Anatomyで幹細胞生物学教授を務めるLukas Sommer氏は述べた。Sommer教授が主導する研究により、治療効果が阻害されるメカニズムが特定された。
この結果は、治療抵抗性の発現を抑制する新たな治療法の概念をもたらすものである。このプロジェクトは、USZに所属するMitch Levesque氏とReinhard Dummer氏との共同で行われた。
抵抗性の腫瘍細胞と非抵抗性の腫瘍細胞の比較
この研究では、治療前と治療中の腫瘍細胞を採取するために、革新的な細針生検を用いた。
これにより、研究者たちは各細胞を個別に分析できるようになった。
検体が採取された患者は、腫瘍形成のシグナル伝達経路を阻害するメラノーマの標的がん治療を受けていた。
「治療に反応する腫瘍もあれば、抵抗性を示す腫瘍もあることが重要であった」とSommer氏は述べた。
これにより研究チームは、抵抗性の腫瘍細胞と非抵抗性の腫瘍細胞の代謝と環境を比較し、有意差を調べることができた。
腫瘍因子と免疫細胞の相互作用
最も重要な発見の一つはPOSTN遺伝子に関するものである。この遺伝子は、抵抗性腫瘍において重要な役割を果たす分泌因子をコードしている。
実際、治療にもかかわらず病勢が急速に進行した患者の腫瘍では、POSTN分泌量が上昇していた。
さらに、これらの腫瘍の微小環境には、がんの発生を促進する免疫細胞のサブタイプである、ある種のマクロファージが多く含まれていた。
ヒトのがん細胞とマウスの両方で行った一連の実験を通して、研究チームは、POSTN遺伝子発現量の上昇とこのタイプのマクロファージとの相互作用が治療抵抗性を引き起こすメカニズムを示すことができた。POSTN因子はマクロファージの表面にあるレセプターに結合し、メラノーマ細胞を細胞死から守るように働く。
「これが標的治療が効かなくなった理由である」とSommer氏は述べた。
がんを促進するマクロファージがなければ治療抵抗性は発現しない
このメカニズムの発見は有望な出発点になると研究チームは考えている。
「本知見は、腫瘍微小環境内に存在する特定のタイプのマクロファージを標的とすることで、治療抵抗性を克服できる可能性を強調している」とSommer氏は述べた。
「この方法を既存の治療法と併用することで、メラノーマの治療成功率を大幅に改善できる可能性がある」
https://ecancer.org/en/news/24949-the-mechanism-behind-melanoma-resistance-to-treatment
(2024年7月1日公開)