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01 Aug 2024
University of Missouri School of Medicineの新たな研究結果によると、糖尿病性神経障害の治療に使用される薬剤が、肺がん患者に対する化学療法の有効性を高める可能性が示唆されている。
この研究はAmerican Association for Cancer Researchの学会誌Clinical Cancer Research誌に発表された。
外科的治療や化学療法を受けたとしても、50%を超える非転移性の非小細胞肺がん患者が再発を経験する。この再発の主な原因は、薬剤耐性を示すがん細胞に起因している。
研究著者であるJussuf Kaifi博士は、研究者らが、これらの細胞に対する化学療法の感受性を高める方法を特定したと述べている。
「化学療法を含む従来の肺がん治療は、薬剤耐性の影響により、がんに対してほとんど、あるいは全く効果を示さないことが多い」とKaifi氏は述べた。
「これは患者の死亡の主な要因となっており、薬剤耐性や化学療法耐性を回避する方法を見出すことが、患者の転帰を改善するために極めて重要である」
本研究では、非小細胞肺がん腫瘍10例を検査し、そのうちの半数が薬剤耐性であることが確認された。薬剤耐性を示す腫瘍では、特定の酵素であるAKR1B10の過剰発現が認められた。
糖尿病性神経障害治療薬であるエパルレスタットを用いた治療により、腫瘍の薬剤耐性が低下し、化学療法に対する感受性が著しく高くなった。
エパルレスタットは数ヵ国で使用されており、患者の忍容性も良好であるが、米国ではまだFDAの承認を得ていない。
本薬剤は現在、FDAの承認プロセスの一環として高水準の臨床試験の段階にある。
FDAの承認を得ることができれば、エパルレスタットは肺がん患者向けの抗がん剤として急速に普及する可能性がある。
「一般的に、がん治療のための新薬開発は、非常に長期間にわたり、高コストで非効率なプロセスである」とKaifi氏は述べている。
「それに対して、これらの薬剤を他の疾患に『転用』することは、はるかに迅速で、コストも抑えられる。薬剤耐性を克服する観点から、エパルレスタットを早期に臨床導入することにより、肺がん患者の治癒率を改善させる可能性がある」
Jussuf Kaifi博士(MD, PhD)はMU Health Careの胸部外科医であり、MU School of Medicineの外科助教授でもある。また、胸部外科の主任も務めている。
彼の専門分野は、肺の悪性および良性疾患を含む一般的および低侵襲胸部外科手術である。
彼はドイツのUniversity of Hamburgにおいて医学の学士号および博士号を取得した。
https://ecancer.org/en/news/25039-diabetes-drug-reduces-drug-resistance-in-lung-cancer-improving-chemotherapy-effectiveness
(2024年7月18日公開)