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e-cancer:乳がん 薬物と化学療法の併用が、がん治療の有効性を高める 

23 Aug 2024

University of Michigan Health Rogel Cancer Centerの新たな研究によると、トリプルネガティブ乳がんの脳転移患者に対して化学療法と脂肪酸合成酵素阻害剤を併用すると、治療効果が改善する可能性があることが判明した。

この研究結果はnpj Breast Cancer誌で発表された。

これまでの研究で、脳内微小環境において、がん細胞が利用可能な脂質は極めて限られていることが示されており、がん細胞が生き残るためには自ら脂質を生成することが重要であるとされている。

「我々は脳転移性トリプルネガティブ乳がんモデルにおいて、脂肪酸を生成する酵素である脂肪酸合成酵素を阻害することで、この代謝の脆弱性を利用することを目指した」と、Michigan Medicineの血液・腫瘍内科学助教授であり、本論文の責任著者であるNathan Merrill博士(Ph.D)は述べた。

研究結果は、化学療法の有効性を向上させるだけでなく、低用量で脂肪酸合成酵素を阻害するだけで、細胞が移動して全身へ拡散する能力を低下させることも示している。

トリプルネガティブ乳がんは、HER2陽性乳がんとともに脳に転移するリスクが最も高い。

脂肪酸合成酵素阻害剤と化学療法の併用効果を検証するため、Merrill氏の研究チームは「相乗作用」を追究し、2つの薬剤を個別に投与するよりも、併用投与したほうが高い効果を示すかを評価するための厳密な方法を模索した。

「我々の研究の特筆すべき点は、初めて脳転移患者から開発された2つの新たな細胞株を発表したことである」とMerrill氏は述べた。

「これらの細胞株は、同一の患者から採取され、腫瘍を複数切除しているという点において特に独自性がある。これは、この研究分野における重要なリソースとして追加すべきである」

これらの研究結果は、Merrill氏の研究チームを、胸を躍らせる方向へと導いている。

次に、彼らは脂肪酸合成酵素の阻害が転移に与える影響について、正確に理解を深めなくてはならない。

「我々の研究室は以前、脳内微小環境を模倣したチップを開発した。脂肪酸合成酵素の阻害により転移カスケードのどの段階が最も影響を受けるか、このチップを用いてより深く理解しなくてはならない」とMerrill氏は述べている。

さらに、これらの研究結果をマウスモデルで検証したいと考えている。

脂肪酸合成酵素の阻害は、第Ⅰ相臨床試験において安全性が確認されており、がん以外の非アルコール性脂肪肝疾患(現在は、metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease/仮称:代謝異常関連脂肪性肝疾患 )の治療にも利用されている。

加えて、脂肪酸合成酵素の阻害は、現在、HER2陽性進行乳がんに対する追加療法として評価されている。

さらなる研究が必要であるが、Merrill氏は、マウスでの検証を経て、これらの結果がトリプルネガティブ乳がん患者の治療改善に寄与する可能性があると期待を述べている。

 

https://ecancer.org/en/news/25095-drug-chemo-combo-increases-cancer-treatment-efficacy

(2024年7月31日公開)

 

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