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29 Nov 2024
線維芽細胞は結合組織の固有細胞であり、創傷治癒と組織修復に重要な役割を果たしている。
線維芽細胞は膠原繊維などのタンパク質のネットワークである、いわゆる細胞外マトリックスを産生し、組織を安定させ弾力性を持たせるだけでなく、その他にも多くの役割を果たしている。
がん関連線維芽細胞(CAF)は固形がんの重要な構成要素である。CAFはがんの発生に決定的な役割を果たし、治療の成功に大きな影響を与える。
Medical University Viennaの皮膚科が行った研究は、基底細胞がん、有棘細胞がん、メラノーマといった様々なタイプの皮膚がんにおいて、これまで知られていなかったCAFの多様性を、シングルセル(単一細胞)解析を用いて分子レベルおよび空間レベルで検討した初めての研究である。
本研究はNature Communications誌に掲載された。
上皮細胞、間葉系細胞、免疫細胞などの他の細胞との相互作用を含む、腫瘍環境における線維芽細胞の包括的な研究を通して、筋線維芽細胞様RGS5+ CAF、マトリックスCAF(mCAF)、免疫調節CAF(iCAF)の3つがCAFの明確に区別できる3つの亜型として同定された。
腫瘍の悪性度が増すにつれてこれらの亜型の分布が変化していることは、特に注目に値する。
それぞれの亜型は腫瘍微小環境において異なる役割を持つ
これらの亜型のうち2つは免疫系に影響を与えるが、その方法は異なる。
mCAFはより多くのマトリックスタンパク質を産生し、悪性度が低い腫瘍では腫瘍と間質の境界部に多くみられる。
それらはがん細胞の胞巣を取り囲んでおり、T細胞などの免疫細胞が腫瘍に浸潤するのを防いでいる。
これとは対照的に、浸潤性基底細胞がんや高悪性度メラノーマなどの悪性度の高い皮膚がんでは、iCAFの存在が確認されることが多くなっている。これらの細胞は大量のシグナル伝達因子(サイトカインやケモカイン)を産生し、免疫細胞の誘導と活性化に重要な役割を果たしている。
「興味深いことに、実験で皮膚がん細胞のセクリトーム(secretome)に曝露させた正常線維芽細胞はiCAFと同様の変化を示し、ナイーブT細胞を活性化できることが示された」と本研究のリーダーであり、Medical University Vienna皮膚科のBeate Lichtenberger氏は本知見について述べた。「この結果は、これらの亜型を標的とした治療の可能性を示唆している」
この研究結果は皮膚がんの新たな治療法、特に免疫療法分野の開発に関連するものである。
Lichtenberger氏は本知見の意義について、「様々なCAFの亜型、特に免疫調節性iCAFの標的治療は免疫反応を強化してがん細胞の転移を抑制することにより、治療の成功率を大きく改善する可能性がある。これらの新たな発見は革新的な治療アプローチの基礎となり、皮膚がん治療を著しく効果的なものに変える可能性がある」と述べた。
https://ecancer.org/en/news/25710-study-identifies-subtypes-of-fibroblasts-in-skin-cancer
(2024年11月20日公開)