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04 Dec 2024
Journal of the National Cancer Institute誌に最近発表された論文によると、糖尿病患者の血糖値を管理するために一般的に使用される広く入手可能な薬剤は、免疫療法の効果を高め、過体重または肥満の肺がん患者における無再発生存率を改善する可能性がある。
Roswell Park Comprehensive Cancer Centerの最高戦略責任者兼胸部外科部長であるSai Yendamuri 医学博士(MD,MBA,FACS) は、共同責任著者としてレトロスペクティブ研究を主導した。
過去20年間にわたり、研究者らはメトホルミンががんの進行を遅らせる可能性を示唆するエビデンスを見てきたが、臨床試験の結果では、その関連性はほとんど確認されていない。
これまでの研究結果に基づき、Roswell ParkのYendamuri博士らは、この薬剤の抗がん作用は、過体重または肥満の肺がん患者の特定の患者群において認められる可能性があるという仮説を立てた。
さらに、標準体重の患者を対象とした過去の臨床試験では、これらの効果の確固たるエビデンスが曖昧であった可能性があると同研究者らは考えた。
この仮説を検証するため、同研究者らは非小細胞肺がん (NSCLC) 患者の2群のデータを調査した。一方には、体格指数 (BMI) が25以上で過体重/肥満とみなされる患者511名、もう一方にはBMIが25未満で過体重とみなされない患者232名が含まれ、全員が手術を受けた。
2番目の群のデータを用い、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる免疫療法を受けたNSCLCの過体重患者284名と非過体重患者184名を対象に、無増悪生存期間に対するこの同薬剤の効果を評価した。
さらに同研究者らは、前臨床肺がんモデルを用いた実験で、メトホルミンが腫瘍の進行、抗腫瘍免疫および免疫チェックポイント阻害剤に対する反応に及ぼす影響を実証した。
「我々の研究は、メトホルミンの抗がん作用が肥満の場合でのみ有効であることを示している」と、Yendamuri博士は述べている。
「メトホルミンを服用し、手術を受けた過体重患者では、無再発生存期間が延長したことが観察された」
動物モデルを用いた前臨床試験では、メトホルミンが腫瘍の増殖を遅らせ、肥満による免疫系の抑制を好転させることが示された。
メトホルミンと免疫チェックポイント阻害剤 (抗PD-1抗体療法) の併用療法では、さらに腫瘍増殖制御が得られたが、この効果は基本的に肥満モデルでのみ認められ、免疫チェックポイント阻害剤を投与した過体重患者でのみ認められた無増悪生存期間の改善と類似していた。
Roswell Park免疫学部の腫瘍学助教で、今回の新たな研究の共同上席著者であるJoseph Barbi博士(PhD)は、肥満または過体重の患者において、メトホルミンが免疫抑制機構と腫瘍殺傷プロセスを活性化するメカニズムとのバランスを変化させることをチームの研究結果が示していると付け加えている。
「メトホルミンを含む治療レジメンが肥満および過体重患者の臨床転帰を改善する可能性に注意喚起することにより、今後の研究に刺激を与えたいと考えている」とBarbi博士は述べる。
「我々の研究結果は、増加している肺がん患者を対象に、より効果的に肺がんを予防または治療できる可能性のある薬剤の組み合わせを検証する根拠となると考えている」
Yendamuri博士とBarbi博士は、臨床的および前臨床的観察に基づき、肺がんのリスクが高い過体重または肥満の人を対象に、この同薬剤の肺がん予防効果を評価する第Ⅱ相臨床試験 (NCT04931017) を計画した。
Roswell Parkは、米国およびカナダで本試験を実施している3つの施設のうちの1つであり、同試験はNational Cancer Instituteの資金援助を受けている。
「メトホルミンは30年間使用されており、安全性についても長い実績がある。また、あらゆる種類の薬剤の中で最も広く入手可能で、手頃な価格の薬剤の一つである」とYendamuri氏は述べている。
「もし、これをがんとの闘いに転用できれば、非常に心が躍ることである」
https://ecancer.org/en/news/25724-diabetes-drug-appears-to-fight-lung-cancer-but-only-in-overweight-or-obese-patients
(2024年11月26日公開)