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20 Dec 2024
University of UtahのHuntsman Cancer Instituteの研究者らが、アンデスの高地民族に見られる遺伝子変異を発見した。研究者らは-この遺伝子変異は、ある種の血液がんの重症度や治療効果を予測する新たなバイオマーカーになりうると考えている。
Huntsman Cancer Instituteの研究員であり、University of Utahの血液学・血液悪性腫瘍部門の助教授であるJihyun Song氏(MD)と、Huntsman Cancer Instituteの研究員であり、University of UtahのCharles A.Nugent, MD, and Margaret Nugent Endowed Professorship in Medicine/HaematologyであるJosef Prchal氏(MD)が第66回American Society of Haematology年次総会の最新アブストラクトセッションで研究結果を発表した。
毎年、最新のアブストラクトの中から上位 6 報だけが発表対象として選ばれることを考えると、これは特別な栄誉である。
「これは、高地での生活に関連する遺伝的特徴が病気や治療結果にどのように影響するかを示した初の研究である」と、Song氏は述べる。
「われわれの知見は、このNFKB1遺伝子変異が炎症レベルと治療の成功を予測するのに役立つ可能性があることを示唆している」
Prchal氏とSong氏の研究は、南米のアンデス山脈一帯に住む先住民族、Aymara族の長年にわたるゲノム研究から導き出されたものである。
NFKB1は、多くの場合、炎症を活性化する遺伝子である。
慢性的な炎症は、細胞の異常増殖やがんを引き起こす可能性がある。
Song氏と研究チームによれば、 Aymara族の約90%がこの遺伝子の濃縮変異体を持っている。また、ヨーロッパ人、ヒスパニック系、アジア人の約30%にもみられる。
Song氏とPrchal氏は、炎症の増加を特徴とする血液がんでは、NFKB1遺伝子の濃縮変異体を持つ患者は炎症が少なく、治療に対する反応も良好であることを発見した。
この遺伝子変異の効果は、高地での血栓やその他の炎症反応に対する保護的かつ進化的対策に由来する可能性がある。
「この分子経路は、がんとは関係ない研究を通じて、高地への進化的適応を調査することで偶然発見された」と、Prchal氏は述べる。
「しかし、この経路が炎症を変化させること、そしてそれがAymara人でない人にも起こることを発見したとき、われわれはこの知識を患者から採取した細胞の分析にすぐに使うことができた」
Prchal氏は、真性多血症、本態性血小板血症、その他の骨髄増殖性腫瘍(骨髄で赤血球、白血球、血小板が過剰に生成され、血栓のリスクが高まる血液がんの一種)の治療の著名な専門家である。
これらの疾患は、骨髄線維症や白血病など、より重篤な血液疾患に変化する可能性がある。
「われわれが発見したのは、真性多血症や本態性血小板血症患者の30%は、NFKB1のAndean遺伝子変異を持っている方が、持っていない人よりも実際に良いということである」と、Song氏とPrchal氏は述べる。
「彼らは皆、治療によって完全寛解を得る可能性が高く、経過も良くなる可能性がある」
Song氏とPrchal氏は、NFKB1遺伝子の濃縮変異体の特定により、その変異体の能力を再現する骨髄増殖性腫瘍の薬物療法が開発されることを期待している。
(2024年12月16日公開)