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27 Dec 2024
昨年、Pennsylvania State Universityの生体医工学の研究者らは、マクロファージの細胞内動態を可視化できる超音波画像診断技術を開発した。マクロファージは体内の創傷治癒や感染症の原因となる病原体の検出・除去の役割を担う免疫細胞の一種である。
米国国立がん研究所から5年間で320万ドルの助成金を得た研究チームは、腫瘍細胞の障害活性を高めるよう遺伝子改変したマクロファージの脳腫瘍への輸送を追跡するためにこの技術を応用する予定である。
同時に超音波を利用して、マクロファージの効果を高める薬剤を送達し、脳腫瘍細胞を攻撃するマクロファージの能力を強化する。
「現在、マクロファージが腫瘍に局在し、がんを治療する能力について研究が進んでおり、遺伝子改変によってがん細胞表面抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現するマクロファージが用いられるようになっている」と、主任研究者でWilliam and Wendy Korb Early Career Associate ProfessorのScott Medina氏は語った。
「我々の研究の最初の段階は一般的な免疫細胞が体内のどこに向かうかを追跡することだったが、今はそれを応用して生体医工学的に改変したマクロファージが体内のどこに向かうかを可視化しようとしている。マクロファージは腫瘍に向かって進んでいくのか、あるいは毒性を引き起こす可能性のある望ましくないところへ向かうのだろうか?」
University of Wisconsinの共同研究者たちは、病理学教授であるIgor Slukvin氏の指導の下、生物工学的マクロファージの開発を進めている。
Pennsylvania State Universityの生体医工学assistant research professorであるInhye Kim氏はナノ粒子造影剤と超音波による画像診断を組み合わせて、まずシリコン組織モデルで、その後はげっ歯類モデルで、マクロファージを可視化し追跡する。Kim氏はこの造影剤の開発を主導し、この研究は2023年7月にSmall誌に発表された。
研究者らはマクロファージが期待通りに動くかどうかを判断した後、これらの免疫細胞が標的薬物送達の助けを借りて、がん細胞をより効果的に破壊できるかどうかを検証する予定である。
「超音波を利用するのには2つの目的がある。ひとつはマクロファージの動きを可視化すること、もうひとつはナノ粒子造影剤から薬剤を送達し、マクロファージを刺激してがん治療の効果を高めることである」とKim氏は述べた。
「そのため、免疫細胞の機能を刺激する薬剤などを効果的に送達できるように、ナノ粒子の設計を微調整する必要があった」
Medina氏は本助成での研究について、コントラスト増強超音波画像診断と薬物送達において成功した自らの研究をがん治療へ応用するというエキサイティングな発展が加わることになり、期待していると語った。
「もし成功すれば将来的には自己免疫疾患、感染症、心血管機能不全の治療において新たな治療の道が開ける可能性がある」
Medina氏はHuck Institutes of the Life Sciencesの指導研究員であり、Materials Research Instituteに所属している。
Pennsylvania State Universityのinterim director of acousticsで生体医工学准教授のJulianna Simon氏と、同大学のveterinary and biomedical sciences教授のGirishGirish KirimanjeswaraKirimanjeswara氏は本成金を受けた共同研究者である。
https://ecancer.org/en/news/25809-tracking-immune-cell-brain-cancer-therapies-with-ultrasound
(2024月12月13日公開)