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28 Mar 2025
European Institute of Oncology実験腫瘍学部門のチームリーダーであるLuigi Nezi氏と、Politecnico di MilanoのDepartment of Electronics, Informatics and BioengineeringのFull ProfessorであるMarco Rasponi氏が率いるEuropean Institute of OncologyとPolitecnico di Milanoの研究者らが「gut-on-chip」を開発した。これは人間の腸のミニチュアモデルをチップサイズのデバイス上に再現したものであり、腸の炎症の主な特徴を再現し、免疫療法に対するメラノーマ患者の反応を予測することができる。
本研究の結果はNature Biomedical Engineering誌で報告された。
微生物叢と免疫療法の相互作用は以前より知られている。
これは全身的な影響(免疫療法によって全身に引き起こされる全身の免疫反応)と局所的なプロセス(特に私たちの体内に生息する微生物のほとんどが生息している腸内で生じるプロセス)の両方の結果である。
しかし、後者は動物モデルでしか研究できず、その限界もある。
実際、メラノーマの免疫療法を受けている患者に対して大腸内視鏡検査と大腸生検を行う臨床的な理由は存在しない。
しかし、腸炎は免疫療法の主な有害事象のひとつであり、これによって治療中止を余儀なくされることも多い。
そこで研究者たちは、腸内細菌叢と免疫療法との関連性に着目した画期的な細部設計の「organ-on-chip」技術を大腸に応用することを思いついた。
「Politecnico di Milanoが所有する特許技術であるuBeatが、我々の新しいgut-on-chipモデルの基礎となっている。uBeatはもともと心筋の収縮を再現するために開発され、後に膝関節の生体力学的状態をシミュレートするために応用された。一方、我々はuBeatを典型的な蠕動運動である腸の動きを再現するために応用した」
uBeatが生み出す連続的な動きにより、ヒトオルガノイドから主要な腸内細菌の個体群を分化させることができ、チップ上に非常にリアルな腸内環境を再現することができる。このように複雑な生物学的プロセスを工学的手法だけで運用できることは、特に多くの分野で動物の使用の代わりとして実現を目指しているin vitroヒト組織・臓器モデルの作製において、非常に有望な展望を開くものである」とMarco Rasponi氏は述べた。
「免疫療法に反応しないメラノーマ患者の微生物叢には顕著な炎症促進特性があり、腸管の上皮バリアの完全性が損なわれ、免疫系を制御する分子の生成が亢進していることがわかった」と本研究の筆頭著者であるMattia Ballerini氏は説明している。
「メラノーマ患者の免疫療法に対する腸内細菌叢の影響を研究するというアイデアは、私の米国での研究に由来している。今回、Politecnico di Milanoとの提携により、微生物叢が腸管上皮細胞と相互作用する分子メカニズムに関する詳細な研究を行うための、この新たなデバイスを開発することができた」
これらの特性は臨床現場で免疫療法に対する反応を予測するためのマーカーとして使用できるほか、患者を層別化することによって治療効果を見込める患者にのみ治療を行うことを可能にする。
その結果、患者の生活の質という点で重要な利益をもたらし、国民健康保険制度にとっても大きな節約になる。さらに、我々のgut-on-chipを使用することで治療抵抗性の患者は不要な副作用のリスクを回避し、腫瘍専門医はより良い反応を示す可能性がある治療を行う機会を得ることができる。
そのために必要なことは患者の糞便サンプルを採取し、gut-on-chipでその影響をテストするだけである。最後に我々は、このシステムを使って、効果があまりみられていない他のがんに対する免疫療法への反応に関与する分子メカニズムを研究している。私たちの目標は、このようにして腸内細菌叢の調節に基づく革新的な治療法の新たな開発機会を生み出し、より多くの患者に効果的な治療法を提供することである」とLuigi Nezi氏は述べた。
(2025年2月17日公開)