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16 May 2025
進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者は、チェックポイント阻害薬として知られる免疫療法薬で治療されることが多い。これらの薬剤は、免疫系ががん細胞を殺傷する能力を強化するよう設計されているが、このタイプのがん患者の多くは、持続的な奏効は得られない。
治験薬JNJ-86974680の第Ⅰ相臨床試験の初期結果により、この薬剤がその限界を克服する可能性があることが示されている。
Roswell ParkのPrantesh Jain博士は、一部の肺がん治療の新たな免疫療法アプローチの可能性に関する最新の研究結果を、AACR 2025 Annual Meetingで発表する。
Roswell Park Comprehensive Cancer Center医学部腫瘍学部助教のPrantesh Jain医学博士(FACP)は、イリノイ州シカゴで開催されるAmerican Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting 2025で、火曜日に本研究の初期結果を発表する予定である。
Jain博士は、要旨番号CT137「Initial results from a phase 1 study of an A2a receptor antagonist, administered as monotherapy and in combination with anti-PD1 therapy in patients with advanced non-small cell lung cancer」の発表者および筆頭著者を務める。同演題は、4月29日(火)午前9時から正午(CDT)にポスターセッションFirst-in-Human Phase 1 Clinical Trialsの一環として、セクション48、ボード3にて発表される予定である。
「免疫療法は非小細胞肺がんの治療の在り方を一変させたが、チェックポイント阻害薬で持続的な奏効を得られる患者は依然として限られている」とJain博士は指摘する。
「治験薬JNJ-86974680の初期段階の臨床試験から得られた今回の結果は、腫瘍微小環境における主要な免疫抑制因子であるアデノシン経路を標的とすることで、本疾患に対する免疫療法の臨床転帰を改善するための有望な新戦略となる可能性を示唆している」
多施設共同第Ⅰ相試験(NCT06116786)では、Johnson & Johnson社が開発した低分子A2a受容体拮抗薬JNJ-86974680の評価が行われている。
この薬剤は、免疫細胞上のA2a受容体を阻害することにより、アデノシンを介した免疫抑制を阻止し、腫瘍に対するT細胞活性の回復を図るよう設計されている。
本試験の第1段階では、安全性と投与量が評価されたが、JNJ-86974680を単剤投与した場合、または試験中のPD-1阻害薬であるセトレリマブと併用投与した場合に、用量制限毒性は認められなかった。
抗PD-1治療後に病勢進行を認めた進行NSCLC患者41名のうち、最良全体奏効は病勢安定であり、患者1名は8ヵ月以上治療が継続されている。
「重要な点は、JNJ-86974680が循環免疫細胞上のA2a受容体に対して、ほぼ完全な遮断作用を実証したことである。この薬力学的効果は、今後、腫瘍到達に最適な用量が明らかになることで、さらに改善される可能性がある」とJain博士は指摘する。
この試験の第2段階では、転移病変に対する放射線照射も含まれており、JNJ-86974680、セトレリマブ、放射線療法を併用し、アデノシン経路の遮断が免疫療法に対する腫瘍の感受性をさらに高めることができるかを検討する。これには、これまで免疫療法を受けたことのない患者も含まれる。
研究チームは、JNJ-86974680が血液中を循環する免疫細胞のA2a受容体をほぼ完全に遮断することを発見した。今後、最適用量の確定および腫瘍内濃度の上昇が進むことで、その効果がさらに高まることが期待されている。
本研究チームにはRoswell Parkに加えて、Johnson & Johnson社および米国、韓国、スペイン、ドイツの主要研究機関の研究者が参加している。Columbia University のHerbert Irving Comprehensive Cancer CenterのBrian Henick医学博士が、本研究の上席著者を務めた。
本試験はJohnson & Johnson社の支援のもと継続中であり、Roswell Parkおよび複数の施設で被験者登録を行っている。
(2025年4月16日公開)