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29 May 2025
超高感度の循環腫瘍DNA(ctDNA)に基づくリキッドバイオプシー検査により、大腸がん(CRC)患者において、画像診断前に再発の徴候を検出し、手術後1ヵ月以内に予後予測能が得られたことが、4月25~30日に開催されたAmerican Association for Cancer Research (AACR) Annual Meeting 2025で発表されたVICTORI試験の中間結果で明らかになった。
治療後のctDNAの検出は、CRCにおける再発の強い指標であるが、血液中のctDNAはごく微量であることが多く、検出されないことが多いと、BC Cancer(バンクーバー)のバイオインフォマティシャンで本研究の発表者であるEmma Titmuss氏(MSc)は述べた。
もし十分に早期に検出できれば、血液ベースのバイオマーカーが臨床的意思決定に反映できる有用な情報を提供することが可能である、と同氏は説明した。
「手術後、ctDNAに基づくリキッドバイオプシーは、追加治療によって最も恩恵を受ける患者を特定するのに役立つ可能性がある」と、BC Cancerの腫瘍内科医であり、本研究の責任研究者であるJonathan Loree医学博士(MD,MS)は述べた。
「あるいは、予後良好な患者が不必要な化学療法による毒性を回避するのに役立つ可能性がある。患者の再発をモニタリングすることにより、リキッドバイオプシーは臨床治療を継続的にサポートし、より多くの患者が早期再発に対する二度目の治癒目的手術を受けることを可能にする」
VICTORI試験は、CRC患者の手術後の再発を予測する上で、ctDNAを検出する最適なタイミングを特定することを目的としている。
この前向き中間解析には、切除可能なCRC患者71名(ステージ1~3の患者52名、ステージ4の患者19名)が含まれた。
研究者らは、患者ごとに最大1,800個の体細胞変異を含む腫瘍組織由来の個別化されたパネルを作成した。
リキッドバイオプシーは手術前、手術後8週間にわたり2週間ごと、さらに最長3年間にわたり3ヵ月ごとに採取され、NeXT Personalアッセイで解析された。
ステージ1を超える未治療の全患者33名において、手術前にctDNAが検出された。
臨床転帰の評価が可能であった患者65名のうち、23名が臨床的再発を経験し、その大多数(87%)は、術後補助化学療法が通常実施される基準時期である術後8週間以内にctDNA陽性であった。
臨床的再発を認めた全患者は、肺などの検出困難な転移部位を含め、再発が反射的画像検査で検出される前にctDNA陽性が確認され、その差は中央値で198日早かった。
患者1名は、臨床的再発の416日前にctDNAによる再発が確認された。
Titmuss氏によると、ctDNAは100万分の2(2ppm)という極めて低濃度でも検出された。
初回検出時のctDNA濃度の中央値は24.4ppm、最大値は111,120ppmであった。
初回検出時のctDNA濃度が高いほど、臨床的再発までの期間は短い傾向がみられた。
「我々の研究結果は、手術後のctDNA検査の理想的な実施時期を明らかにするのに役立ち、術後2週間という早い段階で残存がんが検出可能であることを示している」とTitmuss氏は述べた。
しかし、手術直後の時期のctDNAの評価では、正常な細胞由来の遊離DNAがctDNAを希釈する可能性があり、臨床的にはctDNAを臨床意思決定に活用するための採取時期としては、術後4週の方がより適切であると思われると、同氏は付け加えた。
本研究は現在も多くの患者の登録を継続しており、著者らは、これにより結果の精度が向上し、今後の前向き研究において、ctDNAを臨床的管理と治療方針決定の判断材料として組み込む際の指針となることを期待している。
本研究の限界の1つは、観察研究であるため、ctDNA検出後の介入が行われていないことである。
著者らは、臨床的管理におけるこの技術の最も効果的な活用法を明確にするには、無作為化試験が必要であると指摘している。
本研究はPersonalis社およびBC Cancer Foundationから資金提供を受けた。Titmuss氏は、利益相反はないと申告している。Loree氏はAmgen、Pfizer、Guardant Health、SAGA Diagnostics、Merck、Ipsen、Novartisのコンサルタントを務めた経験がある。Loree氏はまた、Ipsen、Guardant Health、SAGA Diagnostics、Bayer、Personalis社から研究助成または現物提供による支援を受けている。
(2025年5月2日公開)