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e-cancer:がん全般 ASCO 2025|米国でアルコール関連がんによる死亡が増加

11 Jun 2025

University of Miami Miller School of Medicine付属Sylvester Comprehensive Cancer Centerの専門家らが主導した新たな研究により、米国におけるアルコール関連がん死亡の経時的傾向が初めて明らかにされた。

Escalating Impact of Alcohol-Related Cancer Mortality in the U.S.: A call for action(米国におけるアルコール関連がん死亡の影響拡大:対策を求める提言)」と題された本研究結果が、American Society of Clinical Oncology(ASCO)2025で発表された。

今年初め、前米国公衆衛生局長官は、アルコール摂取と複数のがんリスク上昇との強い関連性について、米国民に警告する勧告を発出した。

このような関連性の多くは、科学者の間では長年よく知られてきたにもかかわらず、一般市民の認知度は依然として低い。

アルコールがどのようにがん関連死亡率の上昇に寄与しているのかを明らかにするため、Sylvesterの研究者らはGlobal Burden of Diseaseデータベースから抽出したデータの解析を行った。

この公開データセットは、世界各国の詳細な疾病情報を収集し、診断や死亡に寄与する可能性のあるリスク因子(アルコール摂取を含む)を推計している。

ASCO Merit Awardを受賞

研究者らは、がんによる総死亡数に加え、アルコール摂取の影響が知られている特定のがん種(乳がん、肝がん、大腸がん、咽頭がん、喉頭がん、口腔がん、食道がん)による死亡についても分析した。

その結果、1990~2021年の間に、米国におけるアルコール関連がんによる年間死亡数は約12,000人弱から約23,000人強へと、ほぼ倍増していたことが判明した。

2007~2021年にかけて、55歳以上の男性ではアルコール関連がんによる死亡率が年間約1%強の割合で上昇しており、この年代の男性における疾病負荷は特に高いことが明らかとなった。

「これは非常に大きく、憂慮すべき増加である」と、本研究を主導し、ASCO年次総会で研究結果を発表したSylvester血液・腫瘍内科フェロー、Chinmay Jani医師は述べた。彼の抄録はASCO Merit Awardも受賞している。

「この関連性については、一般市民だけでなく、医療現場でも認識を高めていく必要がある」と彼は述べた。

「例えば、たばことがんリスクについては広く認知されている。しかし、アルコールについてはその認知が十分ではない」

アルコール関連がん

American Institute for Cancer Researchの2019年の調査では、米国成人の89%がたばこががんのリスクを高めることを認識している一方で、アルコールにも同様のリスクがあることを知っているのは45%に過ぎなかった。

公衆衛生局長官の報告によると、米国では毎年約10万件のアルコール関連がんの新規診断があり、これは全がん症例の約5%を占める。また、アルコール関連がんによる死亡は年間約2万人に上るという。

これは、毎年の飲酒運転による死亡者数を大きく上回っている。

アルコール関連がんによる死亡率の上昇は、ほぼすべて男性における増加によるものとみられている。

女性では、若年層・高齢層を問わず、1990年以降、アルコール関連がんによる死亡率はわずかに低下傾向を示している。

20〜54歳の男性では、アルコール関連がんによる死亡率がわずかに上昇していた。

一方、研究チームはアルコールが原因となったがん死亡の割合も調査し、死亡率が低下傾向にあるがん種であっても、1990~2021年にかけて、男女いずれにおいても、アルコールに起因する割合はほとんどのがん種で上昇していたことが明らかになった。

すべてのがんを合わせた全体では、アルコール摂取が原因と推定されるがん死亡の割合が、1990~2021年の間に約50%増加していた。

つまり、検診や治療の進歩といった他の要因によってがん全体の死亡数は減少していても、アルコール摂取が占めるがん死亡の割合は以前よりも高くなっている。

最大の増加がみられたがん種

アルコール関連のがん死亡において、最も大きな増加がみられたのは肝がん、大腸がん、食道がんであった。中でも、大腸がんと食道がんは、アルコール起因死亡の割合において最も顕著な増加を示した。

研究者らは州別の傾向も分析しており、アルコール関連がんによる死亡率が最も高かったのはワシントンD.C.とテキサス州であり、最も低かったのはユタ州であった。

州ごとの違いは、地域ごとの飲酒文化の差を反映している可能性があるが、社会経済的要因や医療へのアクセス格差も影響している可能性があると、研究者らは述べている。

アルコールとがんとの関連性についての認知度を高めることに加え、この因果関係の背景にある生物学的メカニズムを今後さらに解明していくことが重要だとJani氏は述べている。

アルコールは、DNA損傷やホルモンレベルの変化を含む複数の機序を介してがんリスクを高めることが知られている。

個人間の生物学的な差異は、アルコール摂取がそれぞれのがんリスクにどのように影響するかに関与している可能性があり、こうした違いをさらに解明することで、将来的にはリスクの高い患者を特定し、個別に最適化されたカウンセリングを行うことが可能になるかもしれない。

「本研究が、アルコールが個々のがんリスクに及ぼす影響について一般市民への啓発につながることを期待している。アルコールは修正可能な要因である可能性があるからである」と、同センターの Division of Medical Oncologyの責任者であり、International Affairsのassociate directorおよびmedical directorで、本研究の責任著者であるGilberto Lopes医師は述べた。

 

https://ecancer.org/en/news/26523-asco-2025-alcohol-fueled-cancer-deaths-are-on-the-rise-in-the-us

(2025年5月30日公開)

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