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11 Sep 2025
がんの再発や進行に次いで、心血管疾患はがん生存者の主要な死因である。
Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)データベースによると、1973~2012年の間に当初がんを克服した300万人超のうち、最終的に38%はがんで死亡し、11.3%は心血管疾患で死亡していた。
特に、がん生存者は静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが4~7倍高く、がん患者7人中1人が死に至る。
高脂肪食のがんおよび心血管疾患への影響は研究されてきたが、高タンパク質食とがん関連血栓症への影響に関する情報は少ない。
Boston University Chobanian & Avedisian School of Medicineの新たな研究において、研究者らは高タンパク質食、すなわちアミノ酸トリプトファン (Trp) を多く含む食事が関与することを発見した。
Trp(トリプトファン)はさまざまな高タンパク質食品に豊富に含まれており、実験モデルにおいてがん関連静脈血栓塞栓症のリスクを高める。
「今回の新たな知見は実験モデルに基づくものではあるが、本研究から得られた知識は、ヒトの病態との関連性をさらに検証することへの関心を高める可能性があると考えている」と、共同筆頭著者であるKatya Ravid氏(同校Barbara E. Corkey 教授)は述べている。
研究者らは、大腸がんの実験モデルにおいて、高タンパク質食またはTrpを豊富に含む食事を与えられた群では、通常のバランス食を与えられた群と比較して、血管血栓症の進行がより重度であることを見出した。
また、トリプトファンの代謝に関与する主要な酵素を阻害すると、血管損傷の重症度が軽減することも明らかになった。
さらに、トリプトファンの既知の代謝産物であるキヌレニンが、血栓形成を促進することが知られている血液凝固因子に作用することが明らかになった。
研究者らによれば、この研究は患者の個人レベルおよび集団レベルの双方において潜在的な影響を持つ可能性がある。
「栄養管理はがん患者ケアに不可欠な要素である。がん患者は、がん悪液質(意図しない体重減少、筋肉量減少、食欲不振を伴い、著しい衰弱や疲労をもたらす)や化学療法の副作用を補うために、しばしば食事中のタンパク質摂取量を増やすよう助言される。時に、これらの患者は経静脈栄養(血流への直接投与)を受けることもあり、その中には食事推奨量の約5~8倍のTrpが含まれる場合がある」と、共同筆頭著者である Vipul Chitalia, MD, PhDは説明している。
これらの知見は、Blood Advances誌 にオンライン掲載された。
(2025年8月28日公開)