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e-cancer:膵臓がん 新たに同定されたタンパク質を標的とする膵臓がん治療薬を研究者が開発

08 Oct 2025

膵管腺がん(PDAC)は、5年生存率が10%未満という最も致死率の高いがんの1つである。

University of Cincinnati Cancer Centreの研究者らは、PDAC細胞の特異な腫瘍微小環境を調査し、腫瘍の治療抵抗性に関与する重要なタンパク質を同定した。さらに、このタンパク質を標的とする新薬を開発し、動物モデルにおいて腫瘍を縮小、生存期間を延長した。

2025年1月4月Cancers 誌上で2報の論文が掲載された後、Cancer CentreのAhmet Kaynak氏は、9月28日にボストンで開催されたAmerican Association for Cancer ResearchのSpecial Conference in Pancreatic Cancerで研究成果を発表した。

腫瘍微小環境とは、腫瘍とそれを取り囲む免疫細胞、血管、その他の組織を含む生態系のことである。

Kaynak氏は、PDACの微小環境には免疫系によるがん細胞への攻撃能を抑制する特異な特徴(免疫抑制を引き起こす)があり、薬剤送達を妨げ、化学療法・放射線療法・免疫療法への抵抗性を促進する、と述べた。

「新たな治療法の開発にはアンメットニーズが存在する」と、Kaynak博士(Cancer Centreのtrainee associate memberであり、UC’s College of MedicineのHaematology & Oncology Division of the Department of Internal Medicineのpostdoctoral fellow)は述べた。

「本研究では、腫瘍微小環境における免疫抑制を引き起こす因子は何か、という問いを立てた」

Kaynak氏らは、Hsp70と呼ばれるタンパク質が腫瘍の免疫抑制に寄与していることを同定した。

Hsp70が細胞恒常性の維持(ホメオスタシス)に重要な役割を果たすことはつとに知られていたが、腫瘍微小環境における免疫抑制を支える役割とその作用機序については、これまで広く認識されていなかった。

研究チームは次に、細胞表面の脂質であるホスファチジルセリンとの結合により、がん細胞を特異的に標的とする薬剤SapC-DOPGを開発した。

この研究はKaynak氏の指導教官であるXiaoyang Qi博士が開発し、現在、肺がん治療薬として第Ⅱ相臨床試験が進行中である類似薬SapC-DOPSの研究を基盤としている。

SapC-DOPGは、PDAC細胞内のHsp70を標的とするよう設計された。

PDACの動物モデルにおいて、この薬剤は忍容性が良好で、腫瘍の縮小と生存期間延長という結果をもたらした。

「今後、臨床応用段階へ移行し、SapC-DOPGが膵がん患者の治療薬として使用可能かどうかを検証したい」とKaynakは述べた。

「類似薬SapC-DOPSの安全性は、患者を対象とした臨床試験において証明されている。私たちの新薬も将来患者に安全に使用できることを期待している」

この研究に関するKaynak氏の論文の1つは、今春、Cancer CentreのTrainee Associate Membership Paper of the Yearに選ばれた。彼はまた、若手研究者として受けた支援に謝意を表している。

「この研究と私の学術的成長の期間を通じて、指導教官のQi博士、そしてUC Haematology and Oncology Divisionから貴重な指導と支援をいただいたことに心から感謝している」と彼は述べた。

 

https://ecancer.org/en/news/27086-researcher-developing-pancreatic-cancer-treatment-that-targets-newly-identified-protein

(2025年9月29日公開)

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