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e-cancer:膵臓がん ラベルフリー顕微鏡とニューラルネットワークによる高精度の腫瘍検出

20 Oct 2025

膵神経内分泌腫瘍(PNENs)は、膵臓内のホルモン産生細胞に影響を及ぼす稀な腫瘍である。

稀ではあるものの、その発生率は過去数十年で着実に増加している。

治療選択肢には化学療法や分子標的治療などがあるが、根治が期待できるのは外科的切除のみである。

しかし、外科的判断はしばしば病理診断の結果に依存しており、その結果が出るまでに数時間から数日を要することもある。そのため治療の遅延、腫瘍の不完全切除のリスクを高める要因となる。

University of Arizonaの研究者らは、外科医が腫瘍組織をより迅速かつ正確に特定するのに役立つ新たな画像診断法を開発した。

多光子顕微鏡法 (MPM) と呼ばれるこの技術は、光を用いた画像診断の一種であり、組織内の自家蛍光分子を可視化できる。

従来の顕微鏡法とは異なり、MPMは検体への損傷が少なく、より鮮明な画像を得ることができるため、手術中のリアルタイム解析に有望な手法である。

Biophotonics Discovery誌の報告によると、研究チームはMPMを用いて、膵臓組織検体をスキャンし、コラーゲン、NADH、FAD、リポフスチン、ポルフィリンなどの自家蛍光マーカーを検出した。

これらの自家蛍光マーカーは、正常組織と腫瘍組織を識別するのに役立つ。

研究者らは、画像を解析するために、機械学習(ML)およびディープラーニングの手法を併用した。

1つのMLアルゴリズムと4つの畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用い、組織の分類を行うよう学習させた。

結果は有望であった。

MLアルゴリズムは腫瘍組織の識別において80.6%の精度を達成した。一方、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)ではそれを上回り、90.8~96.4%の精度が得られた。

これらの高い精度は特に注目に値する。なぜなら、検体が複数のバイオリポジトリ由来であり、この手法が異なる検体ソースに対しても高い汎用性を有することを示唆しているからである。

CNNはMLアルゴリズムよりも高い性能を示したが、後者の方が透明性に優れていた。

研究者らは、MLモデルの判定に影響を与えた特徴量を解析した結果、コラーゲン量やコントラスト・相関といった画像特性が、腫瘍を示す主要な指標であることを突き止めた。

この知見は、今後のモデルの改良やPNENの組織構造の理解向上に役立つ可能性がある。

この研究では、MPMによる画像診断が従来の病理組織診断よりも迅速であることも示された。ただし研究者らは、さらなる技術改良によってより短時間での解析が可能になると考えている。

今後、研究チームは、手術中に得られる新鮮検体を用いて本手法を検証し、PNENのグレードや組織型を判定できるかを検討する予定である。これらの情報は、治療方針をより正確に決定する指針となり得る。

この研究は、がんの診断や手術計画をほぼリアルタイムで行える未来を示唆している。それにより、再手術の必要性を低減し、膵臓がん患者の治療成績を向上させる可能性がある。

 

https://ecancer.org/en/news/27114-high-accuracy-tumour-detection-with-label-free-microscopy-and-neural-networks

(2025年10月6日公開)

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