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e-cancer:大腸がん ESMO 2025:血液中で検出可能な大腸がんDNAが化学療法の決定を導く可能性 ― 研究報告

10 Nov 2025

国際的な研究により、簡単な血液検査で、化学療法が必要な大腸がん患者と安全に治療を回避できる患者を医師が判断する方針が変わる可能性があることが明らかになった。

この研究結果は、オーストラリアの医学研究機関WEHIが主導したものであり、ドイツで開催されたEuropean Society for Medical Oncology(ESMO)学会で発表されるとともに、Nature Medicine誌にも掲載された。

この血液検査は、WEHIのJeanne Tie教授、Peter Gibbs教授、およびJohns Hopkins Kimmel Cancer Centreの共同研究の成果である。

Tie教授が主導したDYNAMIC-III臨床試験では、「循環腫瘍DNA(circulating tumour DNA:ctDNA)」として知られる血流中に放出された腫瘍由来の小さなDNA断片を検出する検査が、手術後にがんが残存しているかを明らかにし、それに応じて治療を調整することが可能であることを見出した。

オーストラリア、ニュージーランドおよびカナダでステージⅢの大腸がん患者1,000人以上が本研究に参加し、全員が原発性大腸がんの切除手術から約6週間後に採血が行われた。

ctDNAが検出されなかった場合、患者は「低リスク群」と判定され、ctDNAが検出された場合には「高リスク群」と分類された。

その後、参加者は標準的な化学療法を受ける群、またはctDNAの検査結果に基づいて治療を行う群のいずれかに無作為に割り付けられた。

Peter MacCallum Cancer Centre(Peter Mac)の腫瘍内科医でもあるTie教授は、今回の研究成果について、ctDNAが大腸がん領域に真のプレシジョン・メディシン(精密医療)をもたらす可能性を示したと述べた。

「ctDNAは強力なツールであり、治療選択を導く上で役立つとともに、どの患者がより強度の低い治療を安全に受けられるか、またどの患者が代替治療を検討すべきかを特定するのに役立つ」と彼女は述べた。

「現時点では、ステージⅢの大腸がん患者の大半に同じ化学療法を実施しているが、ctDNA検査により個々のリスクに基づいた治療の最適化が可能になる」

「一部の患者にとっては、強度の低い治療法でも同等の有効性を示し得ると同時に、オキサリプラチンなどの化学療法による不要な毒性を軽減し、生活の質を改善できる可能性がある」

「DYNAMIC-III試験は、血液検査によって標準強度化学療法から利益を得られる患者と、安全に減量レジメンを受けられる患者を特定することで、より個別化されたリスク適応型化学療法を提供できることを示している」

ctDNAレベルに基づいて低リスクと判定された患者では、予後は極めて良好であり、術後3年経過時点で87%が無再発であった。

「これらの患者は、化学療法を減量しても安全に治療を受けることができ、入院回数の減少や神経障害などの副作用の軽減につながった。無再発生存率もわずかに低下する程度にとどまった」とTie教授は説明した。

これに対し、術後もctDNAが検出された患者では再発リスクがはるかに高く、3年後時点で無再発であったのは約半数にとどまり、ctDNAレベルの上昇に伴いリスクはさらに悪化した。

この群では、より強度の高い化学療法を受けても転帰の改善は認められず、新たな治療戦略の必要性が示唆された。

本研究は、Canadian Cancer Trials Group(CCTG)、Australasian GI Trials Group(AGITG)およびPeter MacCallum Cancer Centre(Peter Mac)との共同で実施された。

DYNAMIC-III試験のカナダ側責任者であり、CCTG Senior InvestigatorであるJonathan Loree博士は、このような重要な試験でオーストラリアの共同研究者たちと協力できたことを大変嬉しく思っていると述べた。

「本研究は、切除後ステージⅢの大腸がん患者における補助化学療法の選択に際し、ctDNAの予後的価値を示す最良の前向きなエビデンスを提供するものである」とJonathan Loree博士は述べた。

「本研究結果は、ctDNAを臨床応用へ導入するために必要なエビデンスを構築する上で極めて重要である」

大腸がんはオーストラリアで4番目に多いがんであり、2024年には15,000人以上が診断されている。

 

https://ecancer.org/en/news/27189-esmo-2025-colon-cancer-dna-detectable-in-blood-can-guide-chemo-decisions-study

(2025年10月24日公開)

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