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e-cancer:脳腫瘍 脳腫瘍と闘うためにカスタマイズされた細胞

08 Dec 2025

5年生存率が5%未満である膠芽腫は、最も悪性度の高いタイプの脳腫瘍の一つである。

これまで、免疫療法を含むすべての利用可能な治療法は、がんと闘うために免疫系を強化するものであるものの、期待外れに終わっている。

CAR-T細胞は遺伝子改変され、実験室で製造される免疫細胞であり、がん細胞を識別して破壊するように設計されている。

University of Geneva(UNIGE)と Geneva University Hospital(HUG)の研究チームは、腫瘍環境に存在するタンパク質を標的とすることで、膠芽腫細胞を破壊可能なCAR-T細胞を開発した。

この疾患の動物モデルにおける有効性は、ヒトを対象とした臨床試験への道を開くものである。

これらの結果は、Journal for ImmunoTherapy of Cancer誌に掲載されている。

膠芽腫は脳内に形成される腫瘤として生じ、腫瘍細胞のみならず、他の種類の細胞も含んで構成されている。これは多くのがんに共通してみられる特徴である。

「しかし、膠芽腫はがん細胞を認識して破壊できる免疫細胞であるT細胞が極めて少ないという点で独特である」と、UNIGE医学部および腫瘍・血液学トランスレーショナルリサーチセンター(CRTOH)の研究者であるValérie Dutoit氏は述べている。

「このため膠芽腫は、例えばメラノーマや一部の肺がんとは異なり、標準的な免疫療法に反応しないのである。したがって、われわれのアプローチは実験室でT細胞を生成し、患者に不足しているT細胞を提供することである」

高精度なT細胞

CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)の製造とは、患者の血液からT細胞を採取し、腫瘍細胞を識別して破壊できるように実験室で改変した上で、再び患者に戻すプロセスを指す。

「このアプローチは、T細胞が正常細胞に影響を与えることなく標的化できる腫瘍特異的タンパク質を同定することに基づいている。しかし、膠芽腫は高度に不均一な細胞集団から成ることが特徴であり、この作業はとりわけ複雑である」と、UNIGE医学部医学科およびCRTOHのMigliorini教授(HUG神経腫瘍ユニット長)は説明している。

「われわれは先行研究において、特定の腫瘍細胞の表面に発現する重要な標的である PTPRZ1マーカーを同定した。しかし、単一の標的のみを攻撃するアプローチでは、再発リスクを回避するには不十分である」

研究チームは現在、膠芽腫に関連する新たな標的であるテネイシンC(TNC)タンパク質を標的として、治療手段をさらに強化している。TNCは腫瘍環境内で産生・放出されるタンパク質である。

これは細胞外マトリックスを構成しており、腫瘍細胞がその中に埋め込まれるように存在する一種のゲル状物質である。

テネイシンCを標的とすることで、CAR-T細胞は一連の炎症促進反応を引き起こし、それを産生する細胞の死を誘導する。

「さらにわれわれは、CAR-T 細胞がテネイシンCを産生しないがん細胞も局所的に破壊できることを実証した。これにより、正常細胞に有害な影響を及ぼすことなく、CAR-T細胞の抗腫瘍活性が増強される」と、Denis Migliorini氏は述べている。

腫瘍耐性の克服

研究者らが直面する問題の一つは、CAR-T細胞が急速に疲弊状態に陥る原因となる耐性機構の出現である。

「われわれは細胞疲弊に関与する3つのマーカーを同定し、その働きを抑制することで、ヒト疾患モデルとして用いた膠芽腫マウスにおいてCAR-T細胞の有効性を大幅に延長することに成功した」とValérie Dutoit氏は熱く語った。

この研究の非常に良好な結果により、臨床試験の実施が可能になった。

「われわれの目標は、できるだけ多くのがん細胞を標的とできるよう、複数の標的に対して同時に作用し得る遺伝子改変免疫細胞を生成することである」とDenis Migliorini氏は述べている。

この臨床研究は約1年後に開始され、ジュネーブとローザンヌで実施される予定である。

「また、腫瘍の不均一性に直面した場合でも可能な限り多くのがん細胞を根絶するため、CAR-T細胞を各患者に合わせて個別化し最適化することも求められる」

 

https://ecancer.org/en/news/27299-customised-cells-to-fight-brain-cancer

(2025年11月21日公開)

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