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e-cancer:血液がん ASH 2025:Ph陽性急性リンパ性白血病において化学療法を伴わない治療法を支持する新たな知見

22 Dec 2025

新たな研究において、化学療法を伴わない併用療法は、Ph陽性急性リンパ性白血病(ALL)患者において、分子標的治療と化学療法の併用療法を上回る成績を示した。

この第III相試験は、年齢上限を設けない成人患者を対象としており、新規診断のPh陽性急性リンパ性白血病(ALL)患者において、これら2つの治療法の有効性および安全性を正式に比較した初の試験である。

研究者らは、これらの知見は、有害な影響を伴うことなく化学療法を省略できることを裏づけるものであり、化学療法を伴わない分子標的薬と免疫療法の併用が、この患者集団における新たな標準治療となり得ることを示唆していると述べている。

「この化学療法を伴わないアプローチは、完全寛解率を高めただけでなく、死亡率を有意に低下させた」と、イタリア・ローマのSapienza University of Romeの准教授で、本研究の主任著者であるSabina Chiaretti博士は述べた。

「その有意差は非常に印象的であり、分子応答達成率(治療後の残存がん細胞を高感度に検出する検査に基づく指標)において20%を超える差が認められたため、このアプローチは確かに優れていると言える」

ALLは白血球に影響を及ぼす進行の速い白血病の一種であり、Ph陽性ALLは、フィラデルフィア染色体の原因となる遺伝子異常を特徴とする遺伝学的サブタイプである。

Ph陽性ALL患者は、これまで予後不良であり、化学療法に対する高い耐性を示してきたことから、治療法の改善が必要であることが示唆されている。

近年、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)および免疫療法は有望な治療成績を示しており、化学療法と比べて高い有効性と少ない副作用を示している。

研究者らは、TKI、免疫療法、および化学療法の中から、最適な併用療法を特定することを目指してきた。

本試験では、19~84歳までのPh陽性ALLの成人患者236例が登録された。

参加者の3分の2は無作為に試験群に割り付けられ、TKIと免疫療法の併用療法を受け、残りの3分の1は対照群に割り付けられ、TKIと化学療法の併用療法を受けた。

試験群の患者は、初期治療としてステロイド療法を受け、その後、チロシンキナーゼ阻害薬ポナチニブによる70日間の導入療法および免疫療法ブリナツモマブを2~5サイクル投与された。

対照群の患者には、チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブに加え、65歳以上の患者には化学療法4サイクル、65歳未満の患者には6サイクルが投与された。

化学療法を伴わない試験群では、イベントフリー生存率が有意に高く、治療反応もより良好であった。

追跡期間中央値23ヵ月時点において、イベントフリー生存率は試験群で87%、対照群で71%であった。一方、死亡率は試験群で3.5%、対照群で10%であった。

再発率は両群間で同程度であったが(試験群6%、対照群8%)、試験群における再発の約半数は、治療を中止した患者で発生していた。

完全寛解は、試験群の94%および対照群の79%で達成された。

化学療法を伴わないレジメンでは、測定可能残存病変(MRD)陰性率も高く、これは、がん細胞のすべて、またはほぼすべてが根絶されたことを示す指標である。

対照群ではMRD陰性を達成したのは49%にとどまったのに対し、試験群では、ブリナツモマブ2サイクル後に71%、5サイクル後には80%がMRD陰性を達成した。

「ブリナツモマブの投与サイクル数が多いほど、分子応答達成率は高くなった」とChiaretti氏は述べた。

「この結果は、患者が計画されている5サイクルを実際に受けるべきであることを示唆している。これは重要な点である。というのも、われわれは長年にわたりブリナツモマブを研究してきたが、推奨すべきサイクル数がこれまで明らかではなかったからである」

対照群に無作為に割り付けられた参加者は、疾患がMRD陽性であった場合、試験群へクロスオーバーを選択する機会が与えられた。

対照群の患者の約37%が最終的に試験治療レジメンを受け、そのうち62%がその後MRD陰性を達成した。

死亡例の大半は高齢患者に認められ、試験群で発生した死亡の主な原因は感染症であった。

安全性プロファイルは、本試験で用いられた各治療法で想定されるものと一致しており、有害事象の大半は用量調整により適切に対処可能であったと研究者らは述べている。

本研究はイタリアのみで実施されたものの、Chiaretti氏は、これらの結果はどの国においても適用可能であると述べた。

さらに彼女は、化学療法を伴わない治療アプローチは、入院の必要性を減らし、がん治療を受けながら就労を継続できることから、経済的利点をもたらし得ると付け加えた。

現在、持続的にMRD陰性を維持している患者が、再発リスクを高めることなくTKI治療を中止できるかどうかを検討する別の研究が進行中である。

 

https://ecancer.org/en/news/27422-ash-2025-new-findings-support-a-chemo-free-approach-for-treating-ph-all

(2025年12月10日公開)

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