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31 Jul 2015
化学療法に耐性のあるがん細胞を促進するたんぱく質を標的とする、新薬と化学療法との併用が、大幅に治療改善につながることが、Cancer Cell誌で発表された。
University of Manchesterの研究者らは、タキサンという化学療法薬でがん細胞の治療を行い、たんぱく質ネットワークを注意深く調査した。
この薬剤は一般的に、乳がん、卵巣がん、前立腺などの複数のがん治療に使用される。
その薬剤がこれらすべてのがんに奏効するわけではなく、患者のベネフィットを予測することは困難である。
Cancer Research UKから資金提供を受けている科学者らが、さまざまながんにおけるたんぱく質ネットワークの力を測定した。なぜタキサン系ベースの化学療法がそのがんの一部に奏効する傾向にあり、なぜ一部が耐性になる傾向にあるのか。
この調査では、このネットワークのある特定の成分、Bcl-xLというたんぱく質の一種が同定された。このたんぱく質は化学療法薬で治療した場合、通常細胞を死滅させる自己破壊プロセスを妨げることで、がん細胞が治療に耐える働きがある。
Bcl-xLを妨げる薬剤は存在するものの、タキサンと併用させることで、タキサン単剤療法にくらべて、がん細胞をはるかに死滅させることを示した。
研究リーダー、Cancer Research UK Senior Research FellowそしてLeech Professor of Pharmacology at the University of ManchesterのStephen Taylor氏は、「この注目すべき調査により、化学療法によりがんと闘う力をより促進する可能性があることが示された」と、述べた。
「この新しい薬剤の組合せは、がん細胞の抵抗力を弱める可能性があり、化学療法が最終的な打撃を与え、腫瘍破壊を容易にさせる。そして、嬉しいことに、Bcl-xLの標的薬はすでに存在し、臨床試験で検証されている」
「薬剤の組合せは、タキサン投与患者の治療改善と、化学療法用量の低下を可能にした。そのため、副作用は軽減する」
Cancer Research UK,のsenior science information officer であるEmma Smith氏は、次のように述べた。「われわれが、がん治療をより効果的で有益なものにするには、化学療法が患者にとって最も有益であると予測することが必要不可欠である」
「化学療法の効果がすぐに出ない場合は、われわれはBcl-XLの標的薬を追加し、うまくいけば実質的な違いをみることができた。この研究はまだ初期段階ではあるが、もしこの結果が臨床試験で立証されれば、何千ものがん患者の治療改善の可能性がある」
参考: Topham, C et al, ‘MYC is a major determinant of mitotic cell fate’. Cancer Cell, 2015.
http://ecancer.org/news/7501
(2015年7月12日公開)