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ecancer : 乳がん : ESMO 2015 : 乳がんが再発する患者としない患者間の遺伝的な有意差の発見が、より良好な治療につながる

01 Oct 2015

乳がん患者の大半は、治療により治癒するが、約5人に1人は、がんがすでに腫瘍のあった部位に再発または体内に転移する。

現在、研究者らは、なぜ一部の原発性乳がん患者だけに再発するのかについて、重要な一歩を踏み出している。

研究者らは、がん再発を引き起こす場合と起こさない場合の、遺伝的要因の違いを発見した。

この発見により、医師は、初回のがん診断にてがんの再発率が高い患者を同定でき、再発の原因となる遺伝子の標的化が可能となる。

European Cancer Congress(ECC)2015にて、Wellcome Trust Sanger Institute(ケンブリッジ)、腫瘍臨床研究者のLucy Yates氏は、乳がん患者1,000例の腫瘍の遺伝子塩基配列決定法(DNAシークエンシング)によるデータ分析の結果を発表した。

161例は、がんの再発または転移による腫瘍であった。

彼らは、初回診断(原発腫瘍)で抽出されたがん内のがん遺伝子と、再発がん内のがん遺伝子を比較した。

彼らは、原発腫瘍と再発腫瘍間の遺伝的相異、そして、がんが再発し拡散し始める後期に発症する変異を発見した。

研究者は、これらの発見が、オーダーメイド医療にとって重要な意味があると述べる。

各がんが時間とともに変異する場合、臨床または試験において、特定の遺伝子突然変異を標的とした治療は、疾患の進行とともに変化が必要になると考えられる。がんの初回診断における検体のみによる治療よりも、がん組織の一般的な検体による治療である。

「この研究は、再発の乳がんから、そして、研究中に検出されたがん関連経路に関係する遺伝子365例からなる検体数より、これまでの中で、最大かつもっとも包括的である」と、研究者らは述べる。

「われわれは、乳がんの再発を引き起こす一部の遺伝子突然変異はがんの中でも比較的まれであり、初回診断の時点で再発性を示さないことを発見した。この研究より、がんの再発をうながす遺伝子とそうでないものの相異が示され、初回診断から後の再発までの期間全体を通じて発症する突然変異との関連性が見出されたと確信している。これらの遺伝子変異の一部は、標的薬剤での治療の可能性がある」

各がんの中で、遺伝的または非遺伝的な(エピジェネティックな)変異が繰り返され、再発がん患者の生存を促進する後期の事象を抑制する可能性がある。

あるいは、免疫系反応といった特定環境要因、異なる治療、または転移そのものの環境は、希少がん遺伝子の発症に影響を及ぼす可能性がある。

これら後期の変異において、研究者は、同じシグナル伝達経路内で活性するJAK2とSTAT3と呼ばれる関連遺伝子の抗腫瘍活性に対する「有力な証拠」を発見した。

「一部の乳がんの中で、このシグナル伝達経路の阻害が、がんの生存に有益であると考えられる」と、Yates氏は述べる。

「興味深いことに、これは、遺伝子の過剰活性により悪性が引き起こるといった他のがんにおけるJAK2の遺伝子変異とは異なる」

拡張したJAK-STATシグナル伝達は、乳がん幹細胞の発症およびがん細胞株の生存に関与することが知られており、前臨床的証拠は、遺伝子の阻害が有益な治療であることを示唆している。

これらの知見は、がん進行の低下が期待されることから、JAK阻害剤を用いた乳がん臨床試験の開発につながった。

「しかし、われわれの調査結果は、サブセット解析において、この経路の阻害が逆効果になる可能性があり、さらなる調査が必要であると示唆する。概して、今回の結果により、precision medicineの時代に、乳がんの多様な性質を理解することの重要性が強調される」と、Yates氏は結論を述べた。

ECCO科学議長のPeter Naredi氏(本研究には関与なし)は、次のように述べた。
「Yates氏の発表のような情報は、precision medicineの時代に、大変重要である。われわれが、原発腫瘍の増殖の情報と共に正しい治療の組合せを選択し、利益を得ない患者の過度な治療を妨げるだけでなく、各乳がん患者に対して正しい治療法を選択することができる。また、本研究は、がんの再発を新しい事象と捉え、そして、初の発症による情報への依存とは対照的に、再発性腫瘍の正しい治療を慎重に選択するべきであることを明らかにした」

ESMOの広報担当者の、ニューヨーク、Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのJorge Reis-Filho氏(研究には関与なし)は、次のように述べた。
「この研究は、原発性乳がんと対照的な、再発を引き起こす遺伝子変異と転移性疾患との違いを明らかにし、治療法を決定するときに転移性遺伝子の特徴を分析することが重要であると強調した。各患者の異なる転移部における突然変異のレパートリーについては明らかでないが、転移性患者における腫瘍から派生した遺伝物質を得ることは、最善の方法であるといえる。さらに、われわれは、この状況において単一もしくは多発性の転移部位を分析するべきかを確認する必要がある」

http://ecancer.org/news/7783        
(2015年9月24日公開)

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