ニュース
06 Jun 2016
無作為化第III相試験より、抗体薬であるトラスツズマブのバイオシミラー(MYL-1401O)が、FDA承認薬のHER2陽性進行乳がん治療薬、トラスツズマブ(ハーセプチン)の有効性および安全性と同等であることが示された。
トラスツズマブ処方の場合とMYL-1401O処方の場合とで、奏効率は同等であった。
両群間において、安全性に有意差はなかった。
本研究は、記者会見でとりあげられ、ASCO 2016で発表された。
「トラスツズマブはHER2陽性乳がんの生存率を著しく改善したが、コストが高いため、世界中の女性の多くがトラスツズマブ治療を受けることができない」と、University of California San Francisco、医学部教授で本研究筆頭著者であるHope S. Rugo氏は述べた。
「われわれは、バイオシミラーの導入により、患者がこの効果的な薬剤にアクセスできることを願う。この薬剤はすでに世界中の何千人もの人々の命を救っている」
研究デザイン
無作為化第Ⅲ相試験は、アジア、ラテンアメリカ、アフリカ、ヨーロッパにおける95施設で実施された。
HER2陽性転移性乳がん500例に対し、1次治療として、タキサンによる化学療法に、トラスツズマブまたはMYL-1401Oの併用を行った。
被験者らは、タキサンによる化学療法とトラスツズマブまたはMYL-1401Oの併用を少なくとも8サイクル施行後、疾患進行まではトラスツズマブのみを処方した。
この治療レジメンは、トラスツズマブが臨床診療および臨床試験の両方における転移性乳がん治療の使用方法と一致した。
奏効率は、化学療法とトラスツズマブまたはMYL-1401Oとの併用による治療後24週の時点で評価された。
研究結果
本研究では、MYL-1401Oが、トラスツズマブと同等の有効性と安全性を有し、免疫応答(低い免疫原性)を誘発しないことを示した。
24週目の奏効率は、MYL-1401O併用で 69.6%に対し、トラスツズマブ併用で64%であった。
応答に基づいた有効性の差がほぼなく、あらかじめ定義されていた内容であった。
免疫原性および安全性は同等であった。
重篤な有害事象の発生率は、トラスツズマブ群で36%、MYL-1401O群で38%であった。
最も一般的な重篤な副作用は、血球数の低下(好中球減少)であった。2つのArm(Armstrong 株)間の心機能の測定値に差はなかった。いずれも治療に関連した死亡は各4例あった。
「われわれの知る限り、抗がん剤ブランドであるトラスツズマブとバイオシミラーとの等価性を示した、初の臨床試験の一つである」と、 Rugo氏は述べた。
研究者らは、以前にMYL-1401Oおよびトラスツズマブの生物学的および物理化学的特性の類似性を示すデータを生成した。
この分析は、バイオシミラーを提案するうえの規制機関要件の一部である。
今後の展望
著者の希望は、世界規模でこれらの生物学的薬剤へのアクセスの改善を目的とし、将来の臨床試験にむけて、他のバイオシミラーの使用やバイオシミラーの併用を探求することである。
http://ecancer.org/news/9542
(2016年6月3日公開)