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28 Oct 2016
免疫療法が、転移性尿路上皮がんにおけるファーストラインおよびセカンドライン治療で有望な結果を示したことが、ESMO2016で発表された。
転移性尿路上皮がん患者の半数ほどは、シスプラチンベースの化学療法によるファーストライン治療を長期実施しても、生存率を確保できない。
これらの患者には現在利用可能な補完代替療法がほどこされるが、生存率は9~10か月である。
第Ⅱ相KEYNOTE-052試験では、転移性または局所進行膀胱がんのシスプラチンに不適格な患者のファーストライン治療として、抗PD-1抗体pembrolizumabの有効性と安全性について評価された。
今回は、KEYNOTE-052試験における最初の登録患者100名に対する中間解析が発表された。
客観的奏効率(ORR ; objective response rate)の主要エンドポイントを24%とした。バイオマーカーカットポイントより薬剤に奏効するであろう患者を同定し、免疫細胞または腫瘍細胞において10%以上の総PD-L1発現を決定づけた。
患者30名では、この発現に対して11名(37%)が奏効した。奏効期間中央値には達しておらず、治療の忍容性は良好であった。
米国、NY、NYU Langone Medical Centreの准教授である筆頭著者の Arjun Balarは「Pembrolizumabは、転移性または局所進行膀胱がんのシスプラチンに不適格な患者のファーストライン治療として良好な安全プロフィールを有し、有益な効果をもたらす」と述べた。
バイオマーカーのカットポイントは、大規模な研究集団による検証が必要であるが、pembrolizumabが効果をもたらすであろう患者を同定する可能性がある。
免疫療法により、この恐ろしい疾患に直面している患者に対するわれわれの治療方法は、急速に再定義されている」
数十年にわたり、最近の免疫チェックポイント阻害剤の開発まで、プラチナベースの化学療法はあったものの、進行性転移性尿路上皮がん患者のセカンドライン治療の世界標準治療はなかった。
本学会における別の研究発表では、第Ⅱ相CheckMate 275試験において、ファーストライン治療のプラチナベースの化学療法があるものの、進行性転移性尿路上皮がん患者270名に対する抗PD-1抗体ニボルマブの有効性と安全性が評価された。
CheckMate 275試験は、現在までに報告された尿路上皮がんにおける抗PD-1抗体の最大の研究である。
患者265名より有効性について評価し、客観的奏効率(ORR)の主要エンドポイントは19.6%であった。中央値7か月の追跡調査において、奏効期間中央値にはまだ達しなかった。
高発現患者ならびにPD-L1発現レベルが1%未満を含めた低発現患者において、奏効率は、化学療法で歴史的に成し遂げられた内容を上回った。
「このデータは、プラチナベースの化学療法があるものの、進行性転移性尿路上皮がん患者に対するニボルマブ治療はすでに承認申請を行っており。FDA (US Food and Drug Administration米国食品医薬品局)は、ニボルマブをブレイクスルーセラピーとして承認した」と、米国、NY、Mount Sinai School of Medicineに所属の筆頭著者であるMatthew Galsky氏は述べた。
「免疫チェックポイント阻害剤はこれらの患者にとって最も有望なアプローチである」
尿路上皮がんの現在の管理状況について、英国、University of WarwickのCancer Research Centre、臨床腫瘍医学准教授であるWarwick Maria De Santis氏は次のようにコメントした。「シスプラチンに不適格な患者、シスプラチンベースの化学療法中の患者にとって、治療選択肢は十分でない」
彼女は「今年、初の免疫チェックポイント阻害剤であるatezolizumabは、尿路上皮がんに対してFDAで承認され、CheckMate 275試験において、ニボルマブはセカンドライン治療薬として同じ結果を示した」と続けた。
「KEYNOTE-052試験では、免疫療法が、化学療法との奏効率の差はごくわずかであり、シスプラチン不適格患者のファーストライン治療として有効であることを示した」と、De Santis氏は述べた。
「しかしながら、pembrolizumabの奏効期間は、ヒストリカル・コントロールでは化学療法における奏効率に勝る。プロトコールでは、さらなる評価を必要とする新たなバイオマーカーの定義とカットオフ値が含まれている」
彼女は「免疫チェックポイント阻害剤により、尿路上皮がんの治療概念に変化がもたらされた。われわれは、他の臨床段階での免疫療法の使用および併用療法として、今後さらに多くの劇的な変化を期待する」と結んだ。
http://ecancer.org/news/10235
(2016年10月8日公開)