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28 Oct 2016
試験の早期中止にもつながる中間解析にて、再発リスクの高い躯幹や四肢 の軟部組織肉腫に対するアントラサイクリン+イホスファミド併用によるネオアジュバント化学療法が生存率の有意な向上と関係することが、ESMO2016にて発表された。
研究では、この化学療法と、組織別サブタイプに沿った化学療法レジメン(tailoring chemotherapy regimens) とを比較した。
「矛盾した研究結果から、軟部組織肉腫のアジュバント化学療法の有効性については、近年さかんに討議されている」と、イタリア、ミラノ、National Cancer InstituteのChair of the Sarcoma Surgery、研究責任者であるlessandro Gronchi氏は述べた。
このマルチ中心の研究において、四肢や躯幹壁に発症する軟部組織肉腫のおおよそ80%を占める5つの組織学的サブタイプから、高リスクの躯幹や四肢の軟部組織肉腫患者287名が登録された。
エピルビシン(120mg/sqm)+イホスファミド(9g/sqm)を3サイクル、または、組織別(tailored)レジメン5つ*のうち1つを3サイクルのいづれかが、1:1で無作為に投与された。*1) 未分化多形肉腫におけるゲムシタビン+ドセタキセル、2)悪性度の高い粘液性脂肪肉腫におけるトラベクテジン、3) 滑膜肉腫におけるイホスファミド高容量長期投与、4)悪性末梢神経鞘腫瘍におけるエトポシド+イホスファミド、5) 平滑筋肉腫におけるゲムシタビン+ダカルバジン
すべてのレジメンは、術前に投与された。
追跡期間中央値12.3カ月後、エピルビシン+イホスファミドを投与した患者は、組織別レジメン(histology-driven regiment)に比べ、46カ月における無再発生存率は0.62 vs. 0.38, p=0.004、全生存率(OS)は0.89 vs. 0.64, p=0.033と有意に高かった。
「リスクの高い躯幹や四肢 の軟部組織肉腫患者の80%は、エピルビシン+イホスファミド併用療法を検討するべきである。なぜなら患者予後を20%も改善するからである」と、Gronchi氏は述べた。
「われわれは、このような中間解析、すなわちネオアジュバント化学療法が支持されるような説得力のある証拠が提供されるのは初めてであり、さらなる研究結果を楽しみにしている」
研究にて組織別レジメンから利益を見出すことはできなかったが、サブグループ解析では、高悪性粘液性脂肪肉腫患者が、トラベクテジン投与時とエピルビシン+イホスファミド併用時の無増悪生存率と全生存率がほぼ同じであることが示された。
「トラベクテジンは従来の化学療法に比べて有毒ではないため、われわれは、このサブグループ解析を拡大し、2つの結果に違いがないことを見極める」とGronchi氏は述べ、組織別の治療が有害作用と関係しなかったことを挙げた。
オーストリア、Medical University ViennaのProgram Director of the Bone and Soft Tissue-Sarcoma Unitの教授 Thomas Brodowicz氏は「研究者らは、組織別の治療を選択し、再発リスクが1/3縮小することを示したかった。すなわち、この試験は第一目標には達成しなかった」と述べた。
「われわれの結論は、アントラサイクリン+イホスファミド併用によるネオアジュバント療法は組織別によるレジメンよりも有効だということである。だが、治療なしと比較するべきだろうか?」
「さらに、3サイクルの組織別治療で十分だろうか?そして、ネオアジュバント治療はリスクの高い全患者にとって正しいアプローチなのか?」と、Brodowicz氏は続けた。
Brodowicz氏は「転移性疾患のための組織別レジメンに対する関心は長期にわたり高かったが、限局性疾患におけるこの研究結果がネガティブであったため、結論を転移性疾患まで広げることができなかった」とコメントした。
「組織別レジメンが有害作用に関係する可能性が明らかにならなかったため、この研究の一番の関心は(もし長期の追跡調査が確定すれば)、リスクの高い四肢や躯幹壁 の軟部組織肉腫患者のネオアジュバント療法の証拠となる。それは、明確な全生存率および無再発生存率が、治療無の場合も含めた他のあらゆる方法と比べて有意に向上することに関連する」と、Gronchi氏は結んだ。
http://ecancer.org/news/10249
(2016年10月10日公開)