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20 Jan 2017
記憶障害はアルツハイマー病の重要な特徴であり、米国では5,400万人以上に影響を与えている疾患である。新研究で、研究者らは、チコリに自然に含まれているチコリ酸と呼ばれる物質がアルツハイマー関連の記憶障害の抑制に効果がある可能性があると報告している。
先日FASEB Journalに掲載された研究では、チコリ酸で治療したマウスが、チコリ酸を投与しなかったマウスより行動テストにおいてよい記憶力を示したことを発見した。
更なる研究が必要ではあるが、本研究の共著者で、中国のCollege of Food Science and Engineering at Northwest A&F UniversityのXuebo Liu氏と研究チームは、チコリ酸がアルツハイマー病と他の神経変性疾患のある患者の記憶力を維持する助けになると述べた。
アルツハイマー病は、認知症の最も一般的な種類であり、全症例の約60~80%を占めている。米国では、66秒ごとに、誰かがアルツハイマー病を発症しており、最近では、死因の6番目に挙げられる。
アルツハイマー病の最も早期の兆候の一つは記憶障害である。例えば、最近の出来事を思い出せないなどは、一般的な軽度の初期段階である。その後の段階では、身近な人を認識できない、愛する人の名前が思い出せない、身近な環境を認識できないなどがある。
期間限定で重症度を軽減するための薬剤はあるが、現在、アルツハイマー病関連の記憶障害を止める方法はない。例えば、コリンエステラーゼ阻害薬は、それを使用している患者の約50%において約6~12か月間、記憶力と他の認知の症状が悪化するのを遅らせる。
現在、Liu氏と研究チームは、チコリ酸が記憶障害を低減するもっと自然な方法を提供する可能性があることを示唆している。
マウスにおけるチコリ酸の記憶力に対する効果を評価する
チコリ酸は、植物やチコリ、レタス、バジルを含む野菜の少なくとも63種に含まれる化合物である。
従来の研究では、チコリ酸は、酸化的ストレスによって起こるある種の細胞損傷を抑制または、さらに防ぐことができる抗酸化特性を持つことが示された。
本研究では、Liu氏と研究チームは、チコリ酸がリポ多糖体(LPS)によって誘導された記憶障害を阻止するかどうかを調査することを目指した。これらは、酸化的ストレスと神経炎症を通して、脳細胞損傷につながる細胞である。
研究チームは、研究結果に到達するために3つのグループのマウスを使用した。LPS治療群、LPSとチコリ酸治療群、そしてコントロール群である。
全群の記憶と学習能力は二つの行動試験を使用してテストした。二つの行動試験は、Y-maze試験といい、新しい環境を探すマウスの意欲を評価するもの、もう一つは、Morris water maze試験といい、環境を思い出し、移動するマウスの能力をテストするものである。
チコリ酸はアルツハイマー病の妥当な治療介入である
研究者らは、LPS治療群は二つの試験を完遂するために、LPSとチコリ酸治療群より長い時間がかかり、それは、チコリ酸がLPSの誘導による記憶障害を抑制することを示唆していることを発見した。
研究は、また、チコリ酸がLPS治療によって誘導されたβアミロイドタンパク質の集積を減少させたことを明らかにした。βアミロイドタンパク質は、アルツハイマー病の前兆と考えられているプラークを脳細胞の中に形成すると分かっている。
さらに、研究チームはチコリ酸が、マウスの脳と小グリア細胞両方でLPS治療によって標的とされた神経炎症を抑制したことも発見した。
研究チームによれば、これらの結果は、チコリ酸がアルツハイマー病のような神経炎症関連疾患にとって妥当な治療介入となる可能性があることを示唆している。
最新の結果は有望ではあるが、チコリ酸のアルツハイマー病患者の記憶障害に与える効果を判断するためには、更なる研究が必要である。
「これらは挑発的な知見である。しかし、LPS レジメンが長期間の記憶障害の典型ではない可能性があるという警告もある。しかし、チコリ酸が一般的な記憶力にとって有益で人間的な栄養補助食品であることが判明する可能性は依然として残っている」
Thoru Pederson, Ph.D., editor-in-chief of The FASEB Journal
http://www.medicalnewstoday.com/articles/315183.php
(2017年1月11日公開)