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MNT : 血友病 : ペンシルベニア大学チームの研究が植物由来の血友病治療の有望性を確認

17 Apr 2017

血友病患者は、止血不能な出血を予防するために、凝固因子を定期的に投与する必要がある。しかし、凝固因子に対する抗体がかなりの割合で発現し、基本的には患者の寿命を延ばすための治療に対してアレルギー性反応を起こす。

ペンシルベニア大学歯学部とフロリダ大学の研究者らは、このような抗体の発現を防ぐ治療法の研究開発を進めてきた。具体的には、凝固因子を阻害するのではなく寛容するよう体に教えるために、植物細胞内で産生されたタンパク質薬剤を使用した治療法である。

イヌに対する治療を検討した新たな試験で良好な結果が得られたため、最終的なヒト治療にも期待がかかる。

本試験の筆頭著者であり、「トランスレーショナル・リサーチ研究所」所長を務めるペンシルベニア大学歯学部の生化学教授Henry Danielは、かつての指導学生Roland W. Herzog氏(フロリダ大学教授、本論文の筆頭著者)と共同で試験を実施した。試験結果は『Molecular Therapy』誌に発表された。

「試験結果は極めて印象的なものであった」とDaniell氏は語った。「我々は各イヌの血液凝固時間を修正し、抗体形成を抑えることができた。あらゆる徴候が、この物質を臨床で検討する準備が整ったことを示している」

試験では、Daniell氏の植物由来の薬剤生産プラットフォーム(特許取得済)を使用した。このプラットフォームでは、遺伝子組換えによって特定のヒトタンパク質を葉に含有する植物を栽培することができる。血友病の場合、研究者らの目的は、患者の命を救う凝固因子投与を拒絶する抗体の発現を防ぐことであった。

研究者らは、形質転換された植物の葉のような凝固因子を含有する物質を摂取することによって、因子タンパク質に対する経口免疫寛容を促すことを思いついた。幼少時にピーナッツを与えると、アレルギー性反応を発現する可能性が低くなるのと正に同じ仕組みである。

この方法は、以前に実施された実験で有望であることが示されており、研究者らが凝固因子VIIIを含有する血友病A植物材料をマウスに与えることによって、この因子に対する阻害物質の形成が劇的に減少した。

今回の新たな試験では、研究チームは血友病Aよりもまれな疾患で凝固因子IXが欠乏する血友病Bに着目した。研究者らは、ヒト凝固因子IXとコレラ毒素Bサブユニットを含有する融合タンパク質を生成するために組換えレタスを生産した。レタス細胞は腸内細菌によって消化される一方で、植物細胞壁が胃での凝固因子の消化を妨げていることから、コレラ毒素Bサブユニットを含有させることによって、融合タンパク質の胃内層の通り抜けが容易になる。レタスは、水耕栽培施設で栽培された。

研究者らは、この治療がヒトに近い動物でも効果があることを確認するために、血友病Bのイヌを用いて実験を実施した。

研究者らは、ノースカロライナ大学の共著者Timothy Nichols氏をリーダーとして、2匹のイヌを用いて予備実験を開始した。10ヵ月間、週2回、イヌにはフリーズドライのレタスが与えられた。このレタスにはベーコン風味が加えられ、エサの上に振りかけられた。

この治療では負の作用が観察されなかったことから、チームは、レタス材を与えるイヌ4匹と対照群として別の4匹を用いて、さらに入念な試験を続けた。実験群の4匹には4週間レタス材が与えられた。また、この時点から週1回、因子IXの注入も開始し、8週間継続された。対照群のイヌは因子注入のみであった。

対照群の4匹はいずれも、因子IXに対する抗体値が有意に高まり、そのうち2匹ではアナフィラキシー反応が確認され、抗ヒスタミン剤の投与が必要となった。これに対して、実験群の4匹中3匹では、1種類の抗体IgG2が最低値に達しただけで、IgG1やIgEについては検出可能な値には至らなかった。実験群の残りの1匹は、治療に対して部分反応を示すに留まった。これについて、研究者らはヒト因子IXに対する抗体が実験前から存在していたためだろうと考えている。

全体的には、治療を受けたイヌではIgG2値が対照群の32分の1となった。

さらに、治療を受けたイヌでは、治療に起因する好ましくない副作用は確認されなかった。また、実験中に採取したどの血液サンプルにも治療に起因する毒性徴候は確認されなかった。

Daniell氏は、有望な成果であると述べた。

「レタス材を与えられたイヌを観察すると、極めて効果的であったことが分かる。因子IXに対する抗体を発現しなかったか、発現したとしてもその値が多少上昇した程度で、その後再び低下している」と同氏は語った。

血友病Aより発現率は低いものの、血友病B患者では治療に対する抗体が発現する患者が多いため、できるかぎり早急な免疫寛容治療の必要性が生じている。

研究チームの次の段階としては、新たに毒性試験と薬物動態試験を実施した後、米国食品医薬品局(FDA)に新薬治験開始申請を行う。年末までには申請を行いたいとしている。「Science Moving Towards Research Translation and Therapy(トランスリサーチと治療を目指す科学)」、略してSMARTTと呼ばれる米国国立衛生研究所(NIH)の助成プログラムではIND申請用の試験を支援している。SMARTTの目的は、動物モデルで有望な結果を示した治療でヒトを対象とする臨床試験実施段階に進展させる速度を早めることにある。

本試験の共著者には、ペンシルベニア大学歯学部のDaniell氏とHerzog氏に加えてJin Su氏とBei Zhang氏、ノースカロライナ大学のNichols氏、Elizabeth P. Merrick氏、Robin Raymer氏、フロリダ大学のAlexandra Sherman氏とGeorge Q. Perrin氏、Novo Nordisk社のMattias Häger氏とBo Wiinberg氏がいる。

本試験は、NIHの国立心肺血液研究所およびNovo Nordisk社からの助成を受けた。

http://www.medicalnewstoday.com/releases/315856.php
(2017年2月15日公開)

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