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12 May 2017
University of Texas Health Science Center (米国、サンアントニオ)の研究者らが、マウス実験で、1型糖尿病を治す方法を発見した。すい臓におけるインスリン分泌を促進する新技術は、今後3年で臨床試験ができるようになるだろう。
同大学糖尿病科の研究の共著者Bruno Doiron氏と研究チームは、つい先日Current Pharmaceutical Biotechnology誌にその結果を発表した。
米国では、1型糖尿病は1億2500万人に影響を及ぼしていると推定され、小児時期に発症するのが一般的であるが、年齢を問わず発症する。1型糖尿病は、免疫システムがすい臓の血糖値を正常化するホルモンであるインスリン産生β細胞を破壊する。結果として、血糖値は非常に高くなる。
現在のところ、1型糖尿病は治らず、食事とインスリン療法をとおして管理する。しかしながら、近年、研究者らは、1型糖尿病を決定的に根絶する手段としてβ細胞を置換する研究を進めてきた。
Doiron氏と研究チームは、新研究では異なるアプローチを取った。チームは、他のすい臓細胞をインスリン産生へ誘導するために、遺伝子導入と呼ばれる方法をどのように使ったか明らかにしている。
この技術を使用して、研究者らは、マウスにおける1型糖尿病を治した。そして、人間においてもこの疾患を治すことに一歩近づいた。
遺伝子導入メソッドはマウスにおける長期インスリン分泌に繋がった
Cellular Networking, Integration and Processingと呼ばれる遺伝子導入技術は、ウイルスをベクターとして利用しながら、特異な遺伝子をすい臓に誘導することを含む。
研究チームは、β細胞が1型糖尿病患者では拒絶されたと言及している。遺伝子導入メソッドと共に、新しく紹介された遺伝子により非β細胞のインスリン産生を促進した。
「すい臓はβ細胞に加えて多くの他の細胞型を持っている。そして、われわれのアプローチはこれらの細胞をインスリンを分泌するために改造することである」と糖尿病科の共著者Ralph DeFronzo氏は述べる。「これは、基本的にはまるでβ細胞のようなものである」
1型糖尿病のマウスモデルでこの技術を使うと、研究者らは有害な副作用なしに、長期にわたるインスリン分泌と血糖調節を誘発することができることを発見した。
「それは完全に作用した。われわれは何の副作用もなく1年間でマウスを治癒させた。それは今まで見たことがない。しかし、それはマウスモデルである。だから、注意が必要とされる。われわれは、内分泌システムの生理学において人間に近い大型動物で実験したい」Bruno Doiron氏より
このテクニックで2型糖尿病の治療もできる可能性
重要なのは、遺伝子導入治療が血糖に反応してインスリンを放出する、従って1型糖尿病の現在の治療を変換する可能性があることであると研究者らは指摘する。
「1型糖尿病における大きな問題は、低血糖である」とDoiron氏は言う。「われわれが提案する遺伝子導入は、改造した細胞がβ細胞の特徴と一致するという点で優れている」
この新しい戦略は1型糖尿病を治すだけでなく、体が効果的にインスリンが使えなくなる時に発症する2型糖尿病患者におけるインスリン治療が不要になる可能性もあると研究者らは述べる。
大型動物でこの技術を実験するには約500万ドルかかるだろう。しかし、研究者らはこれが達成されると信じている。彼らは、今後3年以内に臨床試験を実施できると期待する。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/317343.php
(2017年5月8日)