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07 Sep 2017
HIVとともに生きる人々は、彼らの残りの人生で毎日3種類かそれ以上の異なる薬の併用投与を受けなければならない。残念ながら、この厳しい治療計画に従うことで、彼らは、軽いめまいから生命を脅かす肝臓障害まで幅広い副作用に苦しむ可能性がある。しかしながら、もし彼らが薬の投与を止めたら、細胞の中に潜むウイルスが自然発生的に再び現れる可能性がある。
事実、何年も細胞内に潜むことができる潜在的HIVは、治癒に対する危機的な障壁である。研究者らは、この問題に取り組むために、潜在的ウイルスを再活性化し破壊すること(”shock and kill”と呼ばれる)または、永久に黙らせる方法を見つけるという2つの主要な戦略を研究している。
両方の戦略への取り組みにおいて、Gladstone Institutesの研究チームは、潜伏を破壊し、最終的には感染した患者を治療するために使われる可能性がある薬剤を調査した。彼らは、最近JQ1と呼ばれる、現在ヒトがん試験の初期段階にある新しい薬がどのように潜在的HIVを再活性化できるのかを発見した。
「われわれの発見は、フラストレーションから生まれた」とGladstoneの上席研究者Melanie Ott氏は説明した。氏の研究は、Molecular Cell誌に発表された。「われわれは、JQ1がBRD4と呼ばれるタンパク質を標的とすることをすでに知っていた。しかし、われわれの実験では一貫した結果を産み出さなかった。その後、このタンパク質の違う形を調べ始め、思いがけず、短形式がHIVを黙らせるためのキーであることを発見した」
BRD4の短形式が果たす新しい役割を同定することによって、Ott氏の研究チームは、HIVをコントロールするメカニズムを最終的に説明することができた。彼らは、JQ1がウイルスが自身のコピーの作成を許可するBRD4の短形式を標的とし削除することを示した。
「この領域の多くの人々がBRD4の短形式が存在することさえ知らない」とRyan Conrad氏は述べた。氏はOtt氏の研究室のポストドクターであり、本研究の筆頭著者である。「HIVにおけるこのタンパク質の役割を明らかにする一方で、HIVに関連する他のウイルスとの闘いにも関わる可能性があることを発見した。それゆえ、われわれの知見は侵入ウイルスに対する古い細胞の防御メカニズムへの新しい洞察を提供する可能性がある」
本研究はまた、もしJQ1が、がん、心不全、感染症治療のためにBRD4タンパクを標的とする方法としてすでにテストされているならば、より幅広い疾患に影響を与える可能性がある。
HIVの治癒のための心身一体的アプローチ
多くの科学者らは、HIVを治癒する方法として “shock and kill” 戦略に焦点を合わせているが、彼らより多くの科学者はウイルスを黙らせることに焦点を移している。Gladstoneで発見されたメカニズムは、BRD4タンパクがHIVを再浮上させるか、ウイルスを抑えるために体の能力を強くするかのどちらかを操るという両方の戦略をサポートする可能性がある。
「HIVを黙らせ、再活性化することは、しばしば矛盾するアプローチのようにみえる。しかし、私は、将来的にはそれらがさらに効果的な治療を開発させるために実際に融合される可能性があると考えている」と、Ott氏は補足した。Ott氏はUniversity of California(San Francisco)医学部の教授でもある。「狙いやすいウイルスにショックを与えて殺すことから始め、その後潜在的ウイルスの再現を遅らせるために黙らせるメカニズム使用することも可能である」
この戦略によって、患者が薬を飲むのをやめることができ、ウイルスが再活性化するまでに数年間経過する可能性もある。その時までに、免疫システムがウイルス出現時にウイルスを除去するために十分強くなっている可能性ある。
「それが、私のHIV治癒研究の将来の見方である」と、Ott氏は述べた。
科学者らは、一晩でHIVを完全に除去できないかもしれない。しかし、Ott氏のチームは、感染者が継続して薬を飲むのを止められるようにウイルスを標的とする方法を見つけようとしている。
Article: The Short Isoform of BRD4 Promotes HIV-1 Latency by Engaging Repressive SWI/SNF Chromatin-Remodeling Complexes, Ryan J. Conrad, Parinaz Fozouni, Sean Thomas, Hendrik Sy, Qiang Zhang, Ming-Ming Zhou, Melanie Ott, Molecular Cell, doi: 10.1016/j.molcel.2017.07.025, published 24 August 2017.
http://www.medicalnewstoday.com/releases/319153.php(2017年8月29日公開)