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04 Apr 2018
Psychotherapy and Psychosomatics誌に掲載された新たな研究で、一般的によく使われているプロトンポンプ阻害薬とうつ病との関連がみつかった。研究者らは、プロトンポンプ阻害薬が腸内細菌のバランスを乱すことによって大うつ病性障害を引き起こす可能性があると示唆している。
腸内細菌がわれわれの精神や感情の状態に影響を与える可能性があると、多くの研究で指摘されている。
研究者らは、有益な腸内細菌がいない無菌マウスに、不安、うつ病、および認識機能障害の症状が現れたことを発見した。
腸内細菌は、ある特定のホルモンや神経伝達物質を産生することにより脳の機能を変化させ、感情が腸内細菌に影響を与えるため、外傷後ストレス障害と特定の細菌株との関連がいくつかの研究により発見されたことは驚くにあたらない。
他の研究では、げっ歯類でうつ症状の引き金となる欠損した細菌を特定し、さらに細菌を補うことでうつ症状の兆候を抑えることが可能であることを示している。
ある観察研究では、胃食道逆流症のような酸関連疾患を治療するプロトンポンプ阻害薬は、深刻な大うつ病性障害を引き起こすリスクを高めると示唆している。
このことは米国や世界中で、障害のおもな原因となっている。
この新たな研究の筆頭著者は、Taipei Veterans General Hospital(台湾)精神科のWei-Sheng Huang氏である。
胃酸分泌抑制薬は腸-脳軸を破壊する可能性がある
Haung氏らは、プロトンポンプ阻害薬を服用し、うつ病を発症した患者2,366例のデータを調べ、うつ病を発症しなかったプロトンポンプ阻害薬服用患者9,464例と比較した。
後者のグループは、「年齢、性別、登録時期、エンドポイント、フォローアップ期間を一致」させた。
研究者らは、ロジスティック回帰分析を行い、不安や薬物乱用障害のような精神疾患併存同様、さまざまな人口統計学的因子を調整した。
大うつ病性障害を発症しなかった患者と比較した結果、大うつ病性障害を発症した患者のほうが1日のプロトンポンプ阻害薬服用量が多いことが本研究で明らかになった。
オメプラゾールおよびエソメプラゾールを服用している患者に「うつの傾向のみ」みられた一方、pantoprazole、ランソプラゾール、およびラベプラゾールを服用している患者は臨床的うつ病のリスクが高かった。
本研究の著者らは、「本研究は、プロトンポンプ阻害薬の曝露と大うつ病の関連を調べた最初の研究である」と記載している。
この関連のメカニズムは不明だが、著者らはいくつかの考えられる説明を試みている。
プロトンポンプ阻害薬は、腸-脳軸のバランスを崩したり、もしくは、プロトンポンプ阻害薬を投与後、栄養がきちんと吸収できないことにより、うつ病のリスクを高める可能性があると著者らは示唆している。
精神科医は肺炎、骨折および胃腸感染症の薬の副作用を考慮しながら、必要な場合にはプロトンポンプ阻害薬の処方を継続すべきであると研究者らは警告している。
Husang氏らは、将来的には本研究で発見した胃薬とうつとの関連の背景にある病態生理学を研究すべきであると推奨している。
https://www.medicalnewstoday.com/articles/321164.php
(2018年3月9日公開)