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18 May 2018
Journal of Alzheimer’s Disease誌に発表されたドイツの新たな研究により、65~74歳の成人の嗅覚検査で認知機能低下リスクが高い人を特定できる可能性がある。
認知機能の低下とは、記憶、思考、推論などの精神機能の低下を指す。
これらの能力の低下は「正常な老化」に伴うが、より顕著な低下は認知症の症状である可能性がある。
高齢者において、認知症はアルツハイマー病によって最もよく引き起こされる。
別名、嗅覚機能障害として知られている嗅覚低下は、一般の人々には珍しくなく、年を重ねるにつれて増えている。
神経変性疾患を患う多くの人々は、初期の段階で嗅覚喪失を経験する。例えば、アルツハイマー病もしくはパーキンソン病の大部分の人々がこれに当てはまる。
このため、嗅覚検査がより信頼性があり、直接的になったことから、嗅覚機能が脳機能低下のマーカーとしてますます注目を集めた。―特により明らかな症状が現れるかなり前に神経変性疾患を診断するのに役立つ可能性がある。
年齢別の関連性を調べるための最初の人口調査
この調査は、嗅覚低下と認知能力低下の関連性をみつけるための地域住民をベースにした最初の調査ではない。
例えば、2015年に発表されたMayo Clinicの調査で、平均年齢80歳の多数の男女を調査し、この結論に達している。
しかしながら、著者らが報告書で指摘しているとおり、この調査で初めて、一般集団における嗅覚機能と認知能力の年齢別の関連性について報告された。
著者らは、ドイツのルール地方で多数の住民を観察したHeinz Nixdorf Recall studyのデータを分析した。
1990年代後半に始まった新たな調査では、2000〜2003年に登録した45~75歳の4,814人のボランティアを採用した。50%の男性参加者を登録時、その後、5年後と10年後の2回にわたり検査した。
65~74歳のグループが最も強い関連性を示した
3つ目の調査では、平均年齢68.2歳で48%の男性を含む2,640人の参加者が、「8つの有効な認知サブテスト」を完了し、0~12点のスコアで嗅覚を評価する「Sniffin’ Sticks Screening Test」(嗅覚テスト)を受けた。
研究者らは、嗅覚テストのスコアにしたがって、以下の通り、参加者を3つのグループに分類した。
•スコアが6点以下の場合 「無臭覚」もしくは嗅覚なし
•スコアが7~10点の場合 「嗅覚鈍麻」もしくは嗅覚低下
•スコアが11以上の場合 「normosmic」もしくは正常な嗅覚
研究者らは、認知テスト結果を年齢群と性別ごとに嗅覚カテゴリーと比較した。年齢群は、55~64歳、65~74歳、75~86歳であった。
分析によって、女性のほうが男性よりも全体的に嗅覚がいいことがわかった。
最も注目すべき結果は、65~74歳の人々にとって、ほとんどすべての認知テストにおけるパフォーマンスが嗅覚によって著しく異なることであった。
この年齢層における最悪の認知能力は、嗅覚がない(anosmics)人々の中でみられ、最もよかったのは正常な嗅覚(normosmics)をもつ人々であった。
他の年齢層に同様の「定量的」パターンがあったが、それほど強いものではなかった。
研究者らは、65~74歳の年齢群でみつかった嗅覚との関連性が、「認知機能低下および認知症のリスクが高い人の同定を改善するためのマーカーとなる可能性がある」と示唆している。
https://www.medicalnewstoday.com/articles/321616.php
(2018年4月25日公開)