ニュース
30 May 2018
クルミには心臓を強くし、がんのリスクを減らすなどさまざまな健康上の利点がある。
新たな研究では、これらの利点を説明するメカニズムを明らかにしている。
クルミは、まぎれもなく健康の宝庫である。
抗酸化物質の宝庫であるこのおいしいスナックは、結腸がんのリスクを減らし、コレステロール値を下げ、心疾患を寄せつけず、さらに脳を強化することが証明されている。
しかし、クルミの何が病気との闘いにそれほど効果があるのか? イリノイ大学アーバナ・シェンペーン校の研究者らは、クルミのしわのある殻の下に隠された健康上の効用を明らかにすることを目指し、彼らはその結果をThe Journal of Nutrition誌に発表した。
厳密にいうと、同大学の食品科学栄養学科の助教授Hannah Holscher氏が率いる研究者らは、クルミが腸内微生物叢、あるいは腸内に生息する何兆個もの(主に有益な)微生物にどのような影響を与えているのかを調べた。
ナッツは貴重な食物繊維として知られ、食物繊維は腸内細菌を多様化し増やす。しかし、科学者らの知見はさらに、クルミがわれわれの血管や胃腸の健康にどのように役立つのかを示している。
クルミは有益な代謝レベルを上げる
クルミの健康効果の秘密を明らかにするために、Holscher氏らは、6週間にわたり、18名の参加者を42gのクルミ摂取群と摂取なし群で調べた。
クルミが微生物叢の組成に及ぼす影響を調べるために、研究者らは、本研究の開始時と終了時に参加者の血液と糞試料を集め、分析した。
分析によって、クルミを摂取するとFaecalibacterium、RoseburiaおよびClostridiumの3つの細菌が増えることが明らかになった。研究者らは、これらの3つの細菌が酪酸塩と呼ばれる代謝副産物を産生し、結腸の健康を改善すると説明している。
しかしながら、Holscher氏は、本研究で酪酸塩レベルは測定されていないことに注意してこれらの知見を受け入れなければならないと警告している。 「そのため」彼女は述べている。「これらの微生物が増えたという理由だけで、酪酸塩が増えたとはいえない。われわれはまだ質問に答える必要がある」
Faecalibacteriumが「動物において炎症を抑えることが示された。Faecalibacteriumが多い動物はよりインスリン感受性が高い」 と同氏は補足している。Faecalibacteriumはプロバイオティクス細菌であり得ると同氏は示唆している。
クルミは発がん性のある胆汁酸を減少する可能性がある
本研究により、クルミを摂取する人々はいわゆる二次胆汁酸が減少していることが明らかになった。
胆汁酸は、脂質、コレステロール、および胃腸管内のいくつかのビタミンの吸収を助ける通常の化合物であるが、それらの一部は毒性があることが示されている。
胆汁酸は、一次胆汁酸もしくは二次胆汁酸であり、後者は、最近、結腸がんの一因となることが示唆されている。
「二次胆汁酸は、直腸がんの罹患率がより高い個人でより高くみられる」と同氏は述べている。
「二次性胆汁酸は、[胃腸の]管内の細胞を損傷し、微生物はこれらの二次性胆汁酸を産生している。もし、胃の二次性胆汁酸を減らすことができれば、人の健康にも役立つ可能性がある」
同氏は、クルミに由来するエネルギーを微生物が吸収し処理する過程が、ナッツがわれわれの健康にどのように影響するのかを知る鍵になる可能性があると説明している。
胃の微生物により吸収されたクルミのエネルギー
「クルミを食べることでどのくらいのエネルギーを得るのかを予測するために計算すると、吸収されたエネルギーと一致しなかった」と同氏は指摘している。「実際には、ラベルに書いてあるクルミのエネルギーの約80%しか吸収していない」
「つまり、微生物はその余分な20%のカロリーにアクセスし、脂肪と繊維をその中に残す。その後どうなるのか?それがポジティブな健康転帰もしくはネガティブな健康転帰をもたらすのだろうか?
「われわれの研究は、未消化のくるみの成分と微生物との相互作用がポジティブな転帰をもたらすことを示唆する最初の知見を示している」
しかしながら、「微生物代謝産物の変化を特徴づけるのではなく、追加の微生物叢とそれらが健康転帰にどのような影響を与えるかを調べるためにさらなる研究が必要である」と同氏は助言している。
https://www.medicalnewstoday.com/articles/321744.php
(2018年5月8日公開)